アニメられる日々

アニメ感想ツイート保管庫(暫定

話数単位で選ぶ2019年TVアニメ10選

荒野のコトブキ飛行隊

1話「月夜の用心棒」

水島努監督のオリジナル作品は導入が抜群に良いのですが、本作もうっとりするくらい良くって、実写の大作映画的な趣があります。はいここからスタート!で被写体が動き出すのではなく、状況が流れるように動くところでカメラが回り始める、という感じですね。とりとめのないように見える会話のなかに説明を盛り込み、今どこにいるかという説明をガルパンの学園艦のようにサプライズとして演出したり、空中戦をたっぷりと見せたり、因縁の相手らしき機体との遭遇戦で当面の見どころを示唆したりと、導入として完璧な1話でした。

 

さらざんまい

6話「つながりたいから、諦めない」

 一希が弟・春河に自身の秘密を晒してしまった件でカッパからヒトに戻れなくなった3人が、カッパの姿のまま春河を救うために奔走する様子がユーモラスで、また健気に移りました。ユーモラスに悲しみを包んでなお滲み出てくる悲しみが、かえって際立って胸に刺さりました。

 

厨病激発ボーイ

2話「天使か悪魔の生まれ変わりか」

 菜々子への関谷のストーカー行為を止めさせるため、菜々子と中村が付き合っているという芝居を打つのですが、中村の邪気眼っぷりとそれに動じずついていく菜々子との掛け合いが可笑しかったです。ベタだけども的確にツボを突くネタにやられてしまいました。

 

ヴィンランド・サガ

18話「ゆりかごの外」

トルケル軍の追走とアシェラッド配下の裏切りの混乱の中で、神父がクヌートに説く愛が鮮烈に印象に残りました。母の子に対する想い…われわれが愛と思っていたものが愛ではなく差別だという指摘に、横っ面を張られたような衝撃を受けました。こういった思いもよらないものの捉え方との出会いがあるから物語って素晴らしいですね。

 

荒ぶる季節の乙女どもよ。

3話「バスガス爆発」

小説家を志す本郷が、ネットを通じて性を知ろうとチャットの相手に会うという展開になるのですが、こういう場合ネットで知らない人と会うのは危険だという説教が入るか、またはひどい目にあうという流れになりがちですが、そうはならずにチャットの相手が同じ学校の先生で、それに気付いた本郷が先生の弱みに付け込んで文芸部の顧問になってもらう、と面白くなるように展開していく大胆さに膝を打ちました。 

 

ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 魔眼蒐集列車 Grace note

12話「魔眼蒐集列車6/6 雷光と白夜」

英雄王の背中を追い続けた一人の少年のたどり着いた一つの到達点として、グレイの自身の人生の出発点として、 本作のクライマックスにふさわしい圧巻のバトルアクションを交えて描いた渾身のエピソードは圧巻でした。

 

進撃の巨人 season3 part.2

55話「白夜」

瀕死のアルミンとエルヴィン、巨人化の薬を打てば回復するが薬は一人分しか無い、誰に打つ?という究極の2択を迫られるなかで、アルミンを生かしたいエレンたちとエルヴィンを生かしたいリヴァイとが、それぞれ生かしたい理由の正当性を主張しますが、どちらも単に友に生きてほしいだけというエゴが隠せない、という複雑なニュアンスを情感たっぷりに描きました。 

 

まちカドまぞく

9話「期末テスト!!今日の私は頭脳派まぞく!!」

期末テストのカンニングを提案するご先祖と断るシャミ子、ミカンとの付き合いでシャミ子と映画を楽しむご先祖と、置物形態のご先祖が可愛らしいエピソードでした。

 

女子高生の無駄づかい

11話「ゆめ」

 ヲタこと菊池があこがれのボカロP「低所得P」と同人即売会で会うエピソード。漫画家志望のヲタが低所得Pに抱くクリエイターとしてのあこがれと異性としてのあこがれをしっとりと描きながら、コメディ作品としてしっかり筋を通した良エピソードでした。

 

キャロル&チューズデイ

5話「Every Breath You Take」

 アンジェラが大投資家の前で「高い山をも動かして見せる」と歌って1200万ウーロンの出資を勝ち取る一方で、キャロルとチューズデイは様々な人々のお膳立てで立ったライブハウスのステージで「道は風や木々が教えてくれる、この道を行けば良いんだ」と歌う、両者のコントラストをドラマに落とし込んだ会心のエピソードでした。

 

 

総感

今年は全体的に良いという作品はあってもこの一話がいい!というふうに抜き出すのが難しい構成の作品だったりひとつの作品に良いエピソードが複数あったりで、10を選ぶのは簡単でもひと作品から一つだけ選ぶというのがなかなか難しいですね。そこが楽しいところでもあるのですが。全体的にはいまいちだった作品でもこうして良かった部分をピックアップできるというのも本企画の魅力ですね。

 

2019年TVアニメ10選(作品単位)

さらざんまい

浅草を舞台に、3人の少年がカッパとカワウソの抗争に巻き込まれながら、それぞれの誰にも言えない胸の内に踏み込んでいくという物語。面白おかしいパッケージと意味ありげな仕掛けの数々、ひと癖もふた癖もあるバンクなど、「少女革命ウテナ」や「輪るピングドラム」「ユリ熊嵐」の幾原邦彦さんの新作らしい一面を持ちながら、それまでの氏の作品にはないわかりやすさ、真っ直ぐさが本作の特徴です。そういったところが好みの分かれるところとなったようですが、僕は氏のストレートな作品が見たいと思っていたところだったので、僕にとってはどストライクな作品となりました。そのままでは重苦しいそれぞれの不足や喪失の物語を面白おかしく照らす手際が、しかしながら嫌味がなく愛にあふれていて、そういうところがたまらなく好きでした。

 

ヴィンランド・サガ

 戦いに明け暮れることが神に肯定されている人々が中心の社会の中で、べらぼうに強い戦士トールズが戦いに嫌気が差して落ちのびるという導入、そんな父を目の前で殺された息子トルフィンが父を殺したアシェラッドに復讐するために同道するという展開、戦士の在り方生き方の見本としてのトルケル、われわれと同じ目線を持つ存在としてのクヌートと、舞台設定もキャラ設定も実にバランスが良く、またそれらを生かした厚みのあるドラマは見ごたえがありました。戦士の神話とキリスト教的価値観を衝突させて、独自の価値観を提示するあたりも意欲的でいいですね。ドキュメンタリーとは違う物語の魅力が本作にはありました。

 

まちカドまぞく

ある日ツノとしっぽが生えてきた少女…実は彼女はまぞくだったのです!から始まるコメディ。かわいらしい女の子たちがドタバタするコメディは数多くありますが、本作はまずキャラがいい子すぎないというのがいいですね。ちょっぴり意地が悪かったり面倒くさがりだったりわがままだったり…いい子すぎるとボケもツッコミも弱くなるんですよね。そのへんの塩梅が絶妙でした。そしてもう一つは、みんなちょっぴり不幸だということです。貧しかったり一人ぼっちだったり身動きが取れなかったり…。みんなちょっぴり不幸なのにみんな前を向いていて、健気で愛おしく思えました。僕はご先祖様の置物形態がたまらなく愛おしくて、思い出すだけで愛おしさで涙腺が緩みます。 

 

荒ぶる季節の乙女どもよ。

 文芸部室で恋の妄想に浸っていた無垢な女生徒たちが、望むと望まざると迫ってくる本物の恋と性との遭遇…大人の階段を、蹴つまずき転びそうになりながらも叫びながら駆け上がっていくような様子がなんとも可笑しかったです。ときにシリアスに、ときに見るものの古傷をえぐってくる生々しい恋物語の側面もあるのですが、コメディとして面白おかしくなるように展開をコントロールし、コメディ作品として芯の太い作品に仕上げました。

 

ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 魔眼蒐集列車 Grace note

Fate/zero聖杯戦争に参加したウェイバー・ベルベットことロード・エルメロイⅡ世が聖杯戦争にまつわる事件を解決していく物語。Fateシリーズのファンにとってはシリーズゆかりのキャラが出るだけでも嬉しいのですが、英国の貴族階級目線での優雅な雰囲気作りに魅了されましたし、クールに振る舞うロードがしばしば見せるウェイバー君的弱さや青さが胸を打ちました。年齢と経験を重ねて落ち着きと風格を持ち始め、周囲の信頼も厚い男の、英雄王の背中を追うあの頃と変わらない目線とのギャップが、歳を重ねてもあの頃のままのつもりでいるわれわれの共感を呼ぶわけですね。

 

盾の勇者の成り上がり

 なろう小説のアニメ化作品で、いわゆる俺TUEEEEキャラが4人も出てくる出だしに面食らいましたし、汚名を着せられるくだりのシリアスな描き方が色仕掛けに引っかかって…という事情なのでどうにも締まらないというあたりや、意趣返しとはいえやりすぎるところがあるなど痛痒いところも少なくないのですが、失うものがなくなった盾の勇者がとりあえず生きていくために地道に行動した結果、仲間と勇者としての信頼を少しずつ得ていく様子が小気味良かったです。また、そうして汚名をそそぎ、ひととおりスカッとしたところで、落ちぶれ勇者の逆転劇から世界を救う勇者の本格ファンタジーへと路線をシフトする切り替えのタイミングが抜群に良かったです。

 

荒野のコトブキ飛行隊

 「ガールズ&パンツァー」「SHIROBAKO」の水島努監督作。架空の大陸ユーハングを舞台にした旧日本軍の航空機による空戦アクション劇は、空戦をたっぷり描くためかCGによる作画で、それによって人物の演技演出におぼつかないところがあったのは惜しいところ。ただ、空戦はもとより、本作はカメラワークが抜群に良くって、水島映画と言っても良い風格すらありました。喜劇映画的なユーモラスなやり取りと目配せや眉の動き一つ単位の細かな芝居が生む可笑しみなど、水島努監督作品ならではの魅力に満ち満ちていて、たまらなく好きです。

 

ケムリクサ

荒廃した世界で、ヒトのようでヒトでない何者かたちの行動を追うことから始まった物語は、ヒトと思しき謎の人物わかば目線で進んでいきます。わかば目線で何が起こっているんだろうと考えながら、物語を追っていくのが楽しかったです。また、けものフレンズを作ったたつき監督の描く荒廃した世界の示唆するものに、背筋の伸びる思いもしました。

 

約束のネバーランド

 孤児院と思われた施設が実は…というミステリー。真実を知った主人公たちは、施設からの脱出を計画しますが…。まあ声が大きいこと!そんな大声で!脱出の計画の相談なんかしたら!聞かれるで!連れてかれるでーッ!!と毎回ハラハラさせられました。90年代的な特徴的なキャラデザがぬるぬる動く、アニメーションとしても贅沢な作品でした。

 

女子高生の無駄遣い

タイトル通り、女子高生が女子高生らしからぬ他愛もないことであーだこーだするコメディ。 小学生並みの「バカ」こと田中を中心に、個性的な生徒たちが各話の主役となって繰り広げる他愛もない行動が可笑しかったですし、不意にちょっといい話なども盛り込んで充実の内容でした。バカとロリとの掛け合いやヤマイへのワセダの指導などがツボでした。あと戸松遥さんのヲタJK感あふれる演技が良かったです。

 

 

総感

今年はTVアニメにとって厳しい年になるのでは…と不安に思っていましたが、予想を上回る厳しい年となりました。劇場アニメの活況によっては今後も苦しい状況が続くのではないかと予想されます。それが業界にとって良いことなら致し方ありませんが、TVシリーズを追うのが楽しみな身としては寂しいものがあります。アニメ業界にとってもアニメファンにとっても、来年はいい年になるといいですね。

 

2019年TVアニメOP映像10選

さらざんまい

可愛らしいキャラや風景や色使いに曲、なんだろうと興味をかきたてる仕掛けの数々…可愛らしくてかっこよくて、可笑しくて悲しげで…あっこういうのありがち!と思ってたらいやいや無いわなにこれって思わされるような、なんとも伸びやかな、ありそうでなかったオンリーワンの映像です。

 

盾の勇者の成り上がり(2ndOP)

キャラの目線よりちょっと斜め下とか斜め上とかからの角度で捉えるカメラワークがめちゃくちゃカッコよかったです。ぬるぬると動くアニメーションも素晴らしいですね。

 

ブギーポップは笑わない

なんでこのタイミングでこのシーンを見せようと思ったんだろうというような、ちょっと他にはない独特のセンスの映像がめちゃくちゃカッコいいんですよね。ゼロ年代はじめの漠然とした不安感が蘇ってくるようでした。

 

約束のネバーランド

本編より曲の雰囲気に寄り気味の、ミュージックビデオ的な雰囲気がカッコよかったです。ミステリー作品の緊迫感を演出しつつ、ネタバレも防ぐという意味ではうまいと思います。

 

かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳

あの鈴木雅之さんの曲というのも驚きですが、恋の駆け引きをムーディかつキュートにユーモラスに描いた映像に、華やかで色気があってそれでいてお茶目で清潔感あふれる曲が絶妙にマッチしていました。

 

進撃の巨人 season3 part.2

調査兵団の命運のかかった一戦の緊迫感を、スローモーションでドラマチックに表現しました。

 

PSYCHO-PASS

フジテレビの月9っぽいなというか、とっつきやすいカッコよさが好きです。頬杖をつく霜月とか横目で睨む入江とか、画ひとつがビシッと決まってカッコいいです。

 

ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 魔眼蒐集列車 Grace note

推理モノの洋画や洋ドラのような、高級感あふれる仕上がりが渋いです。

 

アズールレーン

アニメーションというよりはデザインという感じですが、曲のリズムに合わせて画が変化していく様子が音ゲーのように快感で癖になる映像です。

 

BEASTARS

 ストップモーションアニメとしての手間暇にも圧倒されますが、なによりカメラワークが抜群に良くって、人形を動かすことだけでなくそれをどの角度からどう撮るかというところまで計算されてるのが素晴らしいです。

 

 

総感

毎年のことですが、OP映像はどこも力を入れてくるので悩みます。

 選考するために見直すのもまた楽しいですね。

 

 

2019年TVアニメED映像10選

 

 

 

 

 

さらざんまい

深夜の浅草の、人通りはないけども様々な照明に照らされて、雨上がりの路面が光を反射している様子だけでも情感があっていいですね。そこに電脳空間をイメージしたエフェクトと物憂げに佇む3人の主人公を置くことで、「つながり」というテーマをこの社会の何と掛けているのかがひしと伝わってきます。

 

ケムリクサ

アニメーションというよりデザインという感じですが、荒廃した世界にぽんと放り出されて何が起こっているんだろう、と主人公と同じ心境になっているわれわれ視聴者に示唆を与えるような、意味深な映像が不安感を掻き立てます。

 

厨病激発ボーイ

鉛筆書きのラフスケッチのようなタッチのパラパラアニメーションに、スタッフの作品に対する遊び心あふれる気さくな姿勢がにじみ出ていて、なんとも好きです。

 

星合の空

江畑諒真さんらしからぬ固定カメラでの、江畑さんならではの緻密な身体運動の描写が目を引く映像。同じダンスを踊ってるように見えて微妙にタイミングがズレているあたりの描写はさすがです。キャラの特徴を出したり、世に新しいかっこよさや美しさを発信するようなセンスが良いですね。

 

PSYCHO-PASS

電脳空間や本編の内容を示唆するアニメーションが、曲のテンポに合わせて目まぐるしく展開していく様子がスリリングです。ドミネーターがせり上がってくるあたりは鳥肌ものですね。

 

盾の勇者の成り上がり(2ndED)

盾の勇者一行の、過酷な冒険の旅の途中の束の間の穏やかな日々を、穏やかなタッチと色使いで情感たっぷりに描きました。本編を見た後にほっと一息をつける映像です。

  

ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 魔眼蒐集列車 Grace note

移ろう季節のなかで、木の傍でじっと佇むグレイの様子が、彼女の本質を表現していてなんとも健気で愛おしい映像です。斯様に誰かを慕ったり慕われたりしたいものです。

 

私に天使が舞い降りた!

 しかけ絵本や紙芝居のようなタッチで、登場人物の子どもたちが歌って踊る様子がなんとも可愛らしい映像です。

 

ヴィンランド・サガ(2ndED)

北欧神話を根拠に戦に明け暮れる人々の様子を、言葉で肯定や否定をするのでなく、痛みや苦しみや悲しみをぼんやりと伝えるという塩梅が絶妙です。

 

コップクラフト

特に動きがあるわけではないですが、曲に合わせてティラナのいろんな姿が回想のように流れていく様子が好きです。本編を見進めていくと、それらが本編の補足になっているとわかるのもいいですね。

 

 

総感 

 エンディング映像は最近では無かったり、各話ごとに変わったりするので選ぶのも一苦労ですね。そういった作品も含めて、エンディング映像には作品の本質が出るものなんだなと思いました。

 

2019年アニメ主題歌10選

 

METANOIA / 水樹奈々

戦姫絶唱シンフォギアXV OP

 

Q-vism / Who-ya Extended

PSYCHO-PASS3 OP

 

RESISTER / ASCA

ソードアート・オンライン アリシゼーション 2ndOP

 

KODO / nonoc

魔法少女特殊戦あすか OP

 

bullet / Cö shu Nie

PSYCHO-PASS3 ED

 

Dark Crow / MAN WITH A MISSION

ヴィンランド・サガ 2ndOP

 

Game Over / DATS

ノー・ガンズ・ライフ ED

 

TIT FOR TAT / MYTH&ROID

慎重勇者 OP

 

FAITH / MADKID

盾の勇者の成り上がり 2ndOP

 

RISE / MADKID

盾の勇者の成り上がり 1stOP

 

 

 

総感

毎度のことですが、サウンドが気持ちいいかどうかがすべてですので寸評はなし。気持ちいいよねこの曲、かっこいいよねこの曲、くらいのことしか言えませんので。

今年は男性ヴォーカル曲が目立っていたように感じました。アップテンポな曲からムーディな曲まで、ジャンルから曲調から多様でいい曲がいっぱいあって、主題歌的には良いシーズンであったと思います。

話数単位で選ぶ2018年TVアニメ10選

 

宇宙よりも遠い場所 3話

本作は1話ごとに起承転結があって、どのエピソードも10選候補にふさわしいボリュームがあるので悩みました。少女たちが南極へ行こうという途方もない目標に向かって走っていく際のドタバタ感、そこで生じる可笑しみ、可愛らしさや健気さといった本作が当たり前のように持っている地力というか基礎というか、そういった魅力がわかりやすいエピソードの一つとして選びました。南極に行くまでのエピソードもめちゃくちゃ面白いんですよね…。

 

少女☆歌劇レヴュースタァライト 5話

小学生が描いたような書き割りに野球盤のようなファニーなまひるのレヴューを、皆が真剣にトップスタァの座をかけて争う端をどたばたと駆け抜けていく様子が可愛らしかったですし、まひるというキャラの性格や魅力もよく出ていましたね。スタァに囲まれているうちに自分のきらめきを疑い始めたまひるが、確かにきらめいていたからこそ郷土の期待を背負って今ここにいる、ということに気づいての締めも良かったです。

 

ゾンビランドサガ 8話

フランシュシュのメンバーにはじめて家族が登場したことで、フランシュシュのメンバーがゾンビになった経緯、不幸にも人生を終えてしまったことや、残された家族の悲しみなどに対して本作がどう感じているのかという不安に対する回答が得られたエピソードです。それらをすべて良い方向に拾ってくれたのが嬉しかったですし、またとても暖かいエピソードでした。たとえゾンビといえど亡くなったはずの肉親が目の前にいるのに、一定の距離を保つ父親の節度に、リリィの自主性の尊重、自身の身勝手な過去への反省、運命に対する観念など、様々な意味が想像できて、こみ上げるものがありました。

 

はねバド! 8話

倉石監督と望のエピソード、好きなんですよね。独善的に見える監督の采配に、ついに反抗してみせる望でしたが、自分のやりたいバドミントンなんて無かった、だからこれから探してきますという監督への正直な告白が良かったですし、それを受けて降参するように反論を諦めた監督の様子に、監督自身も自分のやりたいバドミントンを探してきた人なんだな、と気付かされるわけですね。

  

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 2話

自動手記人形としての自信を無くしかけているエリカの目の前で、自動手記人形の資質以前に問題ありありなヴァイオレットが堂々たる態度で次々にクレーム案件を引き起こしていく様子や、それに対して呆れて眼鏡がずれるエリカや、客の罵声に怯えて目をシパシパさせるエリカなど、可笑しいやら可愛らしいやら健気やらで、画の艷やかな仕上がりも相まってうっとりしてしまうエピソード。自動手記人形としてやっていけるかというエリカの不安に、向いてなかろうと自動手記人形の仕事を続けるというヴァイオレットの言葉がエリカの道標となって、その締めくくりにエリカ役の茅原実里さんが「あなたの声が道しるべ~」と歌えばもう泣くしかないですよね。

 

ちおちゃんの通学路 5話

水分のとりすぎで通学中に催してしまったちおちゃんが、男子トイレに駆け込んでしまい出るに出られず…というところまでの過程もすごく下らなくて可笑しいのですが、機を見ていざ脱出!というときに窓枠に上半身が挟まってしまい…のところ、男性が女子高生のパンチラに目を奪われてる後ろでちおちゃんが男子トイレの窓枠から引っかかった上半身を抜こうとおしりを突き出して懸命に振ってもがいてる絵面がめちゃくちゃ可笑しかったです。これ、単に窓枠に上半身を詰まらせたちおちゃんが抜け出そうとおしりを振ってるだけならそこまで可笑しくなかったと思うんですよね。女子高生のパンチラに目を奪われてる男性の後ろでパンチラどころでない女子高生がめっちゃおしり振ってるって絵面がもう…。今年最も笑ったエピソードでした。

 

SSSS.GRIDMAN 9話

グリッドマン同盟それぞれを誘惑するためにアカネが見せる夢の世界の中で、裕太が自身の使命を思い出すのが、アカネの身勝手の犠牲者のひとりである問川の墓前であった、というのが激熱でした。一部でbot呼ばわりされたグリッドマンの「君の使命を思い出せ」「君の使命を果たすんだ」がここで生きるわけですね。悪役ながら魅力的でもあるアカネの、しかしながらその犯した罪に対して、作り手が一体どのように思っているのかが最大の懸案でしたが、このエピソードでそれについては重く受け止めてることがわかり、信頼していいと思えるようになりました。

 

ヤマノススメ サードシーズン 6話

山でコーヒーを淹れて飲む山コーヒーのエピソードは、シリーズを通しても最も好きなエピソードとなりました。親友のひなたを「ひなたのやつ」「あいつ」呼ばわりするあおいらしい負けん気で、コーヒーが飲めないのに山コーヒーをすべく準備をする様子がなんとも可愛らしかったです。無事に山コーヒーを終えてもやっぱりまだコーヒーが苦手で…というのもいいですね。時間がゆっくりと流れていて…。

 

ハクメイとミコチ 11話

ドールハウスやミニチュアジオラマを鑑賞してるときに似たワクワクが本作の魅力の一つですが、汽車でお出かけするこのエピソードは好みすぎて呼吸が荒くなってしまいました。我々とは全く別の世界でありながら、我々のよく知ってるものや見覚えのあるものがそこにあって、それが手に入るかもしれないと思えたら、ときめきもひとしおですよね。衣・食・住それぞれにそのときめきがあって、僕は胃がときめいてました。揚げ山芋!

 

ひそねとまそたん 7話

OTFとDパイとの絆を深めるため、Dパイには1度恋をしてもらって、失恋してもらおう、ということを任務として行うというのがユニークですが、その仕掛け人に絹番が選ばれた理由と、彼女を釣るための餌と褒美がまたなんともユニークで可笑しいですよね。拾った漫画誌のコマを目で追う様子も可笑しかったです。そして、恋のエキスパートを称する者さえ読み違えてしまう複雑な恋模様を描いたのもまたなんとも味わい深いです。

 

 

 

 

2018年TVアニメ10選(作品単位)

 

宇宙よりも遠い場所

少女たちが南極へ行こう!と途方もない目標に向かって走り出す事がきっかけになってる作品ですから、たとえ行けなくてもそれはそれでドラマになったと思うんですよね。それが南極で消息を絶った母を探したり、幼馴染と決別したり、不登校の原因となったいじめっ子たちに文句を言ってやったり、アイドルという立場抜きの等身大の友情を得たり、南極観測隊の歴史をなぞってみたり、各々のけじめをつけたりしながら、南極へ行って帰ってくるまでをワンクールでやってしまうという驚異的な作話術で鮮やかにまとめ上げてみせました。少女たちらしいキュートなユーモアでドタバタと駆けながら、テンプレでないその世界を生きる人たちの魂のこもった言葉の一つ一つで感動のドラマを次々と演出し、最後の最後にどでかいサプライズまで用意してくれました。アニメ史にも残る傑作と言っていいでしょう。

 

少女☆歌劇レヴュースタァライト

舞台芸術や芸能を学ぶ学校でトップスタァを目指し切磋琢磨する少女たちの様子を、キリンのオーディションなる奇想天外な空間での戦いを通して象徴的に描いた作品。スタァになるために今ここにいる少女たちが、自身の動機を再確認しながらモチベーションを高め合っていく様子に、こちらも胸が熱くなりました。スタァとは何か、舞台劇とは何か、それらを突き詰めていく姿勢は、実際に公演されている舞台劇を原作とした作品らしくて、またとても上手く物語と掛けていましたね。

 

メガロボクス

あしたのジョー50周年記念作品ながらギヤという強化外骨格を使用した拳闘をショーとする近未来SF風ビジュアルで、一見あしたのジョーとは程遠い斬新さがあるのですが、物語を見進めていくうちに、なるほどあしたのジョーだな、と思わずニヤリとしてしまいます。ただ、本作の魅力はあしたのジョーにいかに掛けているか、ということ以外に、先行きの見えないスリリングなストーリー構成にあります。スラム街でくすぶっていたメガロボクサー・ジャンクドッグが偽りのID「ジョー」を名乗りのし上がろうという道のりは、何時その偽りの身分がバレ、またヤクザに弱みを握られているトレーナーの南部贋作がいつ危険に巻き込まれるか、チーム番外地はつねに綱渡りを強いられます。主役なんだから負けることはないだろう、と一片も思わせることのない手際が見事でした。

 

ゾンビランドサガ

夢に向かってウキウキな少女がいきなり不幸に巻き込まれて、ゾンビになってしまったということが飲み込めないままコミカルにストーリーが展開していくのと、その際の巽の関西芸人のウザい一面をぎゅっと凝縮したようなノリも相まって、第一印象はすこぶる悪かったです。これは一体どうオトシマエをつけてくれるのか、と見届けるつもりで見進めていたのですが、2話の深夜のアーケードでのヒップホップなミュージカルでかなり前のめりになってしまい、ドライブイン鳥とガタリンピックの時点でもうそのへんは目をつぶってもいいか、くらいには気に入ってました。そのうえで、8話のリリィとお父さんとのエピソードで、不幸にも人生を終えてしまった人たちと残された人たちへの哀悼と敬意が込められてるとわかったのですから、これにはもう脱帽ですね。ありがたいです。

 

ひそねとまそたん

学習まんがのようなのどかなデザインのキャラと航空自衛隊の間に可愛らしい龍がいる、その光景は戦争放棄を謳いながら自衛戦力をもつ我が国らしくて、その匙加減の絶妙さがいいですよね。そして来るべき有事に備えてのほほんと職務をこなしていたら、国家の安寧のための贄となることをさらりと強いられるのですから、この辺もある意味我が国らしくて風刺がきいてていいですし、これだけのどかに奉公の意味をぼかしながら、すっと鞘から抜いて刃先をちらつかせるセンスに戦慄しました。

 

ゴールデンカムイ

日露戦争後の北海道を舞台に、アイヌの秘蔵の金塊を巡って各勢力がその在処を示した「刺青人皮」の争奪戦を繰り広げるなかで、先の大戦を生き延びた「不死身の杉元」と騒動の鍵を握るアイヌの少女・アシリパとがそれぞれの目的を果たすべく結託し、行動を共にします。本作の魅力はその争奪戦の駆け引きの妙味と、戦後の騒乱とその中を生きる人々の狂気・残忍性・変態性を、肯定も否定もせず描く一方で、アイヌの少女・アシリパに対する杉元を始めとする大人たちの敬意と尊重と友愛の姿勢をも描くところにあります。人は狂人にも聖人にもなれて、またその両方をひとつの人格に有することも出来ます。だからこそ人の心は複雑で捉え難いし、人と人が関わればドラマが生まれます。そういったことを俯瞰で描ける視点は才能ですよね。濃密なドラマの数々に深い溜息をつくことが多々有りました。

 

ヒナまつり

ヤクザが宇宙人の少女を養う羽目になるコメディですが、とはいえヤクザが主役で笑えるのだろうか、と不安に思ってると、水商売・貧困・児童労働・ホームレス・孤児など際どいところを突いてきてハラハラすること多々あり。宇宙人の少女という無茶さがその危うさをうやむやにしてしまうのがまた可笑しいのですが、いつ何時足を踏み外すか、本作はなかなか安心させてくれなくて、結局最後までハラハラさせられました。それでも美麗な仕上がりの画作りとユーモラスな演出、そして混じりっ気のない無垢さが紡ぐ暖かい人情のドラマも間に挟んでくれたことで、とても良い印象で見終えることが出来ました。あいたー!は今でもたまに聞きたくなります。

 

はねバド!

バドミントンの部活ものですが、トップアスリートたちを中心に据えながら、バドミントンに関わるすべての人が主人公であるような、モブにさえ人生を感じさせるリアリティの積み重ねが見事でした。そんな中で、主人公の綾乃と母親についてだけが漫画的に飛躍していて、そこと周囲との温度差は終始気になってしまいました。それでも、未熟なプレイヤーならではの、トップアスリートならではの、指導者ならではの、挫折した人ならではの…バドミントンに関わるすべての人たちの心境や思考に迫り、何が良いか悪いか一方的に断じること無く多様に描いてみせたのが素晴らしかったです。

 

ハクメイとミコチ

こびとのハクメイとミコチの生活を描いた物語。ドールハウスやミニチュアジオラマを鑑賞してるようなワクワク感が魅力ですが、現実世界にはないはずのこびとのいる世界の中で、どこかで見たような住まいや小物、着るものに食べるもの、生活スタイルを目撃するたびに、その世界がまるで我々と地続きの世界であるかのようなときめきを覚えました。ふっくらと丸みを帯びたタッチ、やさしい色使いがぽってりとあったかい感触を伝えてくれました。画面分割を多用することで、鑑賞の姿勢を補強する気配りも嬉しいですね。

 

刻刻

時が止まった世界に出入りできる石を持った一族が、その石を奪おうという何者かに時が止まった世界で追われる、それは何者か?その目的は?というミステリーですが、シンプルでありながらとてもミステリアスでスリリングで大いに楽しめました。じいさんと無職の父とニートの兄と、ヒロインの一見ただれた家庭環境に不安を覚えましたが、その頼りない家族が止まった世界で見せる活躍、頼もしさが意外でしたし、また魅力的でしたね。人の善し悪しと職の有る無しは必ずしも関係のないという当たり前の事に気づかされました。またヒロインの勇気と、それでも挫けそうになるところも心を揺さぶられました。

 

 

総感

今年は私事でなにかと慌ただしく、シーズンごとの記事すら放っぽってしまいました。来年もおそらくそうなってしまいそうですが、年の締めくくりだけは続けていければと想います。

今年は「宇宙よりも遠い場所」が抜きん出てましたね。良作も多くて充実した年になりました。コメディで元気な作品が多かったように思います。一方で、がたがたと崩れてしまう作品も多々あり、今後への不安も感じました。来年は良い年になるといいですね。見る側にとっても作る側にとっても…。