アニメられる日々

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長門有希ちゃんの消失13話

夢の中で、元の長門の記憶に羨望を覚えつつ拒絶し、自身が消えてしまう恐怖に怯える長門。時折入るノイズと物悲しい劇伴が情感をより一層かき立てる。

事故の後に人格が入れ替わってからのエピソードは、放送開始時からは想像もつかない雰囲気の変わり様で、構図・展開・表情仕草・色彩に劇伴まで、ただならぬこだわりを感じる。今回も渾身の一話だった。

古本まつり会場での、キョンの「夏休みどうする」への長門のリアクション。

夏休みの計画を練りながら歩く面々が不意に看板で隠れる。その看板は「夏祭り花火大会」の看板。おそらく行けないだろうと自覚してるであろう長門の、看板を見つめる横顔の画に、たまらなくなって涙が溢れてきた。忘れがたい光景。

朝目覚めた時、次に自身が目覚めることはないだろう、そう冷静に受け止めて、残された日々を特別なにかするでなくいつもどおり過ごそう、そういうところがまた健気で、変に足掻かないところは元の長門と同じ、消極的で臆病な子なんだな、と切なくなる。

そんな長門が、夕暮れに借りてきた本を読み終えたと同時に眠気に襲われる。人格の消滅という死の間際に、最後にキョンとコンタクトをとれた奇跡を、しっかり自身の想いを伝えるという形で活かす。最後に起きた奇跡、最後に見せた勇気が悲しくも美しい。

長門の変調を察し、急いで駆けつけるキョン。この緊張感が劇伴と相まってまたたまらなく。元の長門とは違う、別人格の長門と過ごしていたんだという状況への理解と、その別人格の長門が消えようとしていると、最後に見せた想いに応えてやりたいと、駆けつけるキョンの焦燥感は、そう思わせるには充分の描写で素晴らしかった。

結果的には間に合わなかった、というところも、叶わぬ恋にトドメを刺してきて憎い演出。間に合って伝わって成仏、という描き方でも良しでそこは好みの問題だろうけど、ベンチで眠る長門の表情を見ると、おそらくキョンの答えはわかっていただろうと。そう思わせるところもまた良い。

原作がどうとか、もう問題じゃないね。かえってそれは邪魔になると思う。

長門のなかで生まれたもう一人の長門が恋をして、思いを伝えて短い生を全うする。事故後のエピソードはそういう話。悲しい悲しい恋物語でした。