アニメられる日々

アニメ感想ツイート保管庫(暫定

プラスティック・メモリーズ13話(終)

暗い街並みが微かに明度を増していく…夜が白み始める光景の描写に見惚れていると、ベランダでツカサとアイラが談笑している。「最後の…一日だね」で、ああだから夜が明けるまでおしゃべりしてたのかと、寝る間も惜しくて…こういうのを説明でなく描写で魅せるところは上手い。

最後の日の朝に部屋の掃除。二人らしいってのもあるし、最後に部屋を綺麗にしたいってのがアイラの発想っぽいし、なにより気が紛れる。

僕は病室から告別式までの始終を見届けられたのが祖父だったんだけど、霊安室ではすがるように泣いてた親族が、その後のいろいろな段取りにてんやわんやで何なら冗談飛ばして笑ったり。でも手が止まると思い出すのかまたぶわっと湿っぽくなって、ああこれ忙しいから心の平静を保ててるんだなあと。

意識してか無意識か、二人が最後の日に掃除を選んだってのは納得がいった。

最後まで普通どおりでいよう!で出勤するけどカヅキにIDパス取り上げられて追い出される二人。この時は珍しく同僚たちがしゃしゃり出てこなくて、空気読んでるのは評価したいけど、皆リアクションが一辺倒なのは物足りない。それぞれがそれぞれの個性からのリアクションで二人に接するあるいは距離をとる、そういう生の質感が欲しかった。

職場を追い出された二人が、遊園地にいこう!となって、ひとしきり遊ぶ微笑ましい光景。ここでツカサが、足元に目をやって、伸びる影に夕暮れを確認し、残された時間の少なさに思い当たり愕然とする、その描写がGOOD。そんなツカサの動揺を見ぬいても、姿勢を崩さないアイラも、この時点では悪くない。

いよいよ閉園間際となり、最後に観覧車に乗る二人。二人が互いの好きなところを交互に言い合う。その流れの中で、アイラが自然に切り出す。

「辛いのに泣くのを我慢して、頑張って笑おうとするところ」

「そんな笑顔が素敵なところ」

そんなツカサが好きだった。そして、今ツカサがそういう状態なのをアイラは見抜いている。

「でも、ちょっと心配かな」

自分の好きなツカサの佇まいが崩壊しつつあるのを見抜いている。それを懸念している。自分が消えてなくなる最後であっても、ツカサには笑顔でいてほしいから。

観覧車が頂点を通過し下降に入る。アイラがそろそろ…と促す。たまらなくなったツカサの、アイラが好きだった佇まいが崩れる。

ずっと我慢してきて、でも我慢できなくなって泣いたツカサの、今とこれまでの我慢に対しての慰労と感謝の念。自分との別れだけは我慢できなかった、それがどれほど嬉しかったことか。

この一連のシーンから、観覧車の下で待つカヅキとのやり取りまでの流れのなかで、いたずらにわんわん泣くところを長回しするでなく、別れの瞬間までをじっくり描写してくれたところは良かった。

ひとつ惜しいところは、前話で消えてなくなる恐怖に夜中起きだしてツカサにすがりついたアイラが、今回は動揺を見せなかったところで、アイラもいろいろ我慢してるんだろうと想像で補えはするけど、いろいろ我慢してるんだ、とわかる描写が少しでもあればよりグッと来たと思う。

アイラの「遺書」を読む同僚たち、というところも今回は頑張ったと思うけど、ここももう少し多様なリアクションが欲しかった。

アイラの「死」から9ヶ月。本社の研修かを終えて戻ってきたツカサのパートナーとなるギフティアの姿を見せなかったところ、ちと弱気に感じた。ここはアイラで良かったと思う。日記も生きるし。

ともあれ、最後に満足出来るだけのエピソードを見られてよかった。感謝。

 

総評

1話めのアイラの涙に、これは骨太のドラマが見られるぞ!と大いに期待したものの、ギフティアのワンダラー化に纏わる設定やエピソードがまるで馴染まず、これならややこしくせずに単純に経年劣化ってことにしといたほうが良かったのではと。

また、ターミナルサービス課の面々が言い方悪いけど皆幼稚で、ツカサとアイラの中を冷やかしてるとしか思えないシーンも多々見られて気分は良くなかった。あと皆行動が一辺倒で、キャラが多いのに平坦な印象だったのは残念。

終盤ツカサとアイラのエピソードに意識が集中するとぐっと引き締まって良かった。

盛り込んだものの食い合せは悪かったが、そのひとつは光っていた。そんな作品。

ともあれ、終わり良ければなんとやらで、文句もいっぱい言ってきたけど楽しかったです。有難うございました。