アニメられる日々

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やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続13話(終)

部室にて、雪乃が焼いてきたクッキーを結衣に差し上げる。

「…ヒッキーのは?」

鞄に目をやり溜息ついて、自分のクッキーを八幡に差し出す雪乃。おそらく鞄には八幡にあげるつもりだった、そこにあるものとは違うクッキーがあるんだろう。ということが帰宅時の別れ際にわかる様になってる。そこにあるものとは違う、特別なクッキーだったから、いざというときに勇気が出なかったのか。

帰宅時の別れ際、八幡が帰るという段になって呼び止める雪乃。鞄に手を伸ばしている。察した結衣が去ろうとするがちょっと違うと思ったのかどうしようかと戸惑い、ギクシャクがピークに達する3人。

そこに陽乃が現れる。母の言いつけで雪乃としばらく同居することになった、とのこと。雪乃は当然嫌だろうけど、陽乃だって嫌なはずなんだよね。でも母の言いつけだからそうするしか無い。そんな苛立ちを、雪乃にぶつけているように見えた。

雪乃が決めるべき「それ」とは進路のことか。おそらく家庭内では進路はこうあるべきってのは決まってるんだろうけど、それは自分で考えると突っぱねてるんじゃないか。そのくせ何も決めきれてないのではないか。だから母は心配になって、姉を介して探りを入れてるのではないか。

陽乃が雪乃をどう見ているのか、前話を観た後に以下のように考えてみたんだけど、どうやらどちらも当てはまってそう。

 

yamanuko.hatenablog.com

 

陽乃が雪乃を許せない理由を考えてみた。

・親の期待に応えるように演じて生きてきた陽乃にとって、自由に生きてる(ように見える)雪乃が許せない?

・家庭の諸々の事情から、又は雪乃自身の問題から、誰かを盾に(陽乃や葉山や八幡?)逃げようというのが許せない?

 ちゃんと考えてるから…と皆のフォローもあり、一応陽乃は一旦退いたけど、帰ったら家で陽乃が待ってる…という状況で、じゃあうち来る?と結衣の家にとりあえず行くことに。

結衣の自室での3人。飲み物を差し入れに来た結衣母が噂のヒッキー君に興味津々な様子から、結衣が家で母に八幡のことを好意的に話しているように伺えて、それはおそらくそれを見ていた雪乃や八幡にも伝わって、「雪乃が来たからママ舞い上がっちゃって…」と取り繕うが苦しい。

そろそろ帰る、という雪乃に泊まっていきなよと勧める結衣。そして八幡の、

「お互い冷静じゃないだろうし、一晩考えるってことにしたらいいんじゃねーの」

「一応連絡だけはしてさ」

考えを改め、泊まることに決めた雪乃。ここで雪乃が『八幡の言った通りに姉に電話し』『八幡が言った通りの理由を告げる』行動と、それにハッと気づき動揺する結衣と八幡、というところ、物凄く恐ろしいシーン。凛として確固たる芯を持ってるかのような雪乃が、同調し流される弱さを二人に、視聴者にハッキリと見せたシーン。凄い。

もちろん陽乃は八幡がそばに居ることも看破し、八幡に(電話)替わって、と言う。完全なる敗北。

 結衣が雪乃と八幡それぞれにデートを持ちかけ、雪乃と八幡をどうにかする作戦イン水族館。海洋生物に抱える問題を棚上げしテンション上がる八幡と、それに戸惑いつつ少しほぐれた様子の雪乃と、それを見つめる結衣。しばしの穏やかな光景の中で、各々の表情の機敏と視線の先が色々語りかけてくる。

ネコザメに触れるコーナーで、ひとしきり堪能した後、「この子達も疲れるだろうから…」と早々に切り上げようとする結衣に結衣らしさを見出す八幡。でも結衣は本当はそういう子じゃない。気配りが無意識にできる子じゃない。意識的にやっている、つまり無理している。そんな戸惑いが伝わってくる。

八幡と雪乃がふたりきりの状況で、群れない大きな一匹の魚に自由を見出した雪乃が、自身を「寄る辺がないと生きていけない魚」と評することで、内面を晒す。晒すのが精一杯、というところ、見てて拳に力が入ってしまう。

名残を惜しむように観覧車に誘う結衣。乗る。でも観覧車が今の3人の状況と重なり切ない。もう終わってしまうのは、観覧車なのか3人の「今」なのか。

観覧車も乗ったし、これからどうする?で帰るだろ、というところを、そうじゃなくて、私達のこと。と切り出す結衣。

震える手で手作りクッキーを渡す。ただのクッキーではない、特別な好意の表れ、それも今の関係を一変させるほどの特別な好意の現れで、それを示すことと関係が壊れることに怯えている様子が伝わってくる。

それをみて鞄に手をやる雪乃。くおお苦しい…鞄に手をやり、首を横に振る雪乃。それは自分には出来ない、とでも言いたげな。

礼ならもうもらってる、と言う八幡に、「それでも…」のあとになにか言い淀んで、「ただのお礼だよ」と続ける結衣。それが嘘なのに気づく八幡。いやもうずっと前から結衣の好意には気づいてて、ずっとごまかしてきた、その問題を結衣につきつけられていることに気づいてハッとしたのか。

結衣が雪乃につきつけた選択は、ずっとこのままを維持するか、それとも取捨選択するか。この時選択するものは、結衣と雪乃、どちらかがしか得ることのできないもの、分かち合うことが出来ないもの。あえてぼかしているけど、それは八幡のことだろう。今それを明言しちゃうとその時点で「ずっとこのまま」ではいられないからぼかしている。

ずっとこのままがいいよね、とあえてその方向で同意を求める結衣。そして、ここでも勇気が出ず、流されそうになった時、八幡が割って入る。

「雪ノ下の問題は雪ノ下自身で解決すべきだ」

これは、関係のあり方も、雪乃自身の抱える問題も、すべてそこにかかっている。自分で選択できるのなら、物事は個別に解決できるはずで、何もかも停滞しているのはそこにある、と突きつけている。

それでも俺は、本物がほしい、そう明言しなかったけども、そこに再び返ってきた。前回の心情の吐露から一度は深まったかに見えた関係と互いの理解は、深みに入ったがゆえにもっと踏み込むことを恐れ、忌避してきた。それがもう一度ぶつかって、それでも本物がほしい、とふたたび踏み込むことが出来た。そして、これが終わりで無いかもしれない。でも何度でも繰り返せばいい。そういうところまで来たのであれば、八幡のいう本物に限りなく近づけたのではないだろうか。

雪乃の依頼の内容が明かされず締めくくる、なんとも後ろ髪ひかれる思いだけど、ぜひぜひ続きが観たいのでどうかひとつ…

 

総評

2期になってキャラデザが一新したことで、いろいろと物議をかもしたけど、ストーリーを補完するような表情や視線、仕草、カメラワークが魅力的で、息の詰まるような緊張感あふれる人間関係が繊細に描かれていて見応えがあった。

また、いわゆる地の文にあたる状況説明をあえて描かないことで、キャラたちのその些細な挙動や言動からその背景や心境を読み解く楽しさがあった。空気を読む楽しさとでもいうべきか。

最後の最後まで息を呑む展開で、どっとため息が出る、それがなんとも気持ちいい。そんな作品でした。3期ぜひ!ぜひ!