GANGSTA. １話

欧州っぽい地域を舞台に、麻薬・売春…マフィアが跋扈する町の、汚れ仕事人とでも言うべきか、やってることはマフィアと変わんないように見えるけどともかく立ち位置のよくわからない二人が主人公で、冒頭からドラッグ・売春・バイオレンスとあまり気分のいい光景ではない。

これはしんどいかな…と思ったんだけど、いろいろ事情があって、そうせざるを得なかったと思われるアレックスの、決して絵空事ではない…というか現実はおそらくもっとひどいのかもしれない境遇が胸を打てば、自業自得と切り捨てることもできなくはないアレックスの境遇を、その自業自得の部分まで含めてそっと慰撫するような、柔らかそうな綺麗に折りたたまれた白いハンカチをもって彼女に差した光明と思える、味わい深い展開に引きこまれていった。

犯罪が多すぎて警察も手を焼いている、アレックスの境遇など知ったことではない、そんなアレックスのような人間には地獄のような町で、彼女を救ったのが殺しも厭わない仕事人・便利屋のウォリックとニックだった。殺しも厭わないが、少なくともひとりの虐げられる女性に温情をかけることの出来る二人が主人公であったということが、とりあえずこの作品を楽しむ上での足場となった。

また、ニックの聴覚障がい者であるという設定がユニークで、それで言葉をほぼ発しないことから、彼の表情仕草で機敏を読み取る楽しみを生み出してる。

それとニックが怒って言葉を発した際の、独特の発声。すごく勇気のいる演技だったと思う。面倒な難癖を付けられる懸念はもちろん作り手にもあったのだろうけど、そうなったとしても差別的なニュアンスは一切ないと説明できる自信が感じられて、渾身の演技演出に身震いした。

どうしょうもなく乱れた世界を、身を削る思いで描きつつ希望を見出そうとしている。そんな作品だと思いたいし、そういう作品であり続けて欲しいという願いを込めつつ、しばし付き合っていこうと思う。