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長門有希ちゃんの消失 16話(終)

別人格長門による告白の件が、元の長門を前にくすぶったままのキョンに焦点を当てた終盤。長門の人格改変編の真の結末といった回で、語り口や展開構図・劇伴とすべてがしっとりしめやかでずしりと重く、最終回にもふさわしい濃密な雰囲気に飲まれていく。

別人格の長門の告白を意識して、元の長門に対して意識してしまっている。問題はそれだけでなく、そのことで元の長門に辛い思いをさせているのかもしれない、ということで、そう気付いてしまったから、一刻も早くけじめを付けねば、と思うに至った…キョンの思考の段取りが説得力あって良い。

意を決したキョンが、ハルヒ金魚すくいに興じる長門の手をとって強引に連れ出す。この時、ハルヒが獲得した金魚を槽に返すことで、ハルヒの片思いを、ハルヒ自身が成就しなかったと認めたことが受け取れて切ない。宇宙人も未来人も異世界人も超能力者もいる世界のハルヒなら、欲しいものは何としてでも手に入れただろうけど、この世界のハルヒは友人を思って身を引くことの出来る、それくらいしか出来ない無力な女の子なんだな…と思えて。「わたし次、射的やる!」と気持ちを切り替えようと自身にも周囲にも言い聞かせるような、そんな台詞と表情が胸を打つ。

長門の手を取り、急ぎ足で祭り会場を進みながら、雑踏や花火の音のどさくさで別人格長門への想いを告白するキョン。自己満足のように思えるけど、これは別人格の長門に対するけじめなので、元の長門は困惑したかもしれないけど、少なくともキョンの「俺が長門を嫌いになることはねえよ」は元の長門にはしっかり伝わった。元の長門との今後の時間的可能性を考えると今はこれで充分だろう。

「だったら、告白の答えはこれしかないだろう」ここから浴衣姿だったはずの長門が制服姿になっている。これはキョンの心象風景か、あるいは元の長門が先の台詞で舞い上がりすぎて意識飛んでる間に別人格長門が現れたのか。後者の可能性は薄いだろうけど、そう解釈もできるのでこれならこれで面白いではある。実は元の長門キョンの告白はしっかり聞いてたはずだけど、舞い上がりすぎて意識が飛んでしまった的な。

ともかく、元の長門にはキョンの好意が伝わったし、別人格長門には告白の返事ができた。そして二人の知らぬところで片思いの恋に幕を引いたハルヒ。異なる恋の行方にきちんとけじめをつけた見事なエピソード。わだかまりが全て解けてすっきりした最終話となった。

最後の最後に、エンドレスエイトの始まりを思わせる幕引きも憎い。ハルヒが主役の世界線のようなエンドレスエイトは起こらないだろう…とも言い切れない、全く別次元の話であるはずなのに、SF(すこしふしぎ)が根付いてる。そんな絶妙な距離感の物語でした。

 

総評

 

ハルヒシリーズとリンクしない、別次元の普通の高校生たちではあるけども、日常的とはいえハルヒシリーズの出来事をなぞってはいるから、それだけでもファンとしては嬉しいではあった。ただ、基本的に皆良い人すぎて物分りが良すぎるから、すれ違いが起伏をもたらすか…と思ったら自然鎮火してしまうような寸止め感が物足りなく感じもした。

ただ、長門の事故による人格改変の一連のエピソードは、まるで別のアニメのように雰囲気がガラッと変わって、画的にもストーリー的にもとても見応えのあるものになっていた。元の人格に戻って日常も戻るとまた少し物足りなくも思ったんだけど、最終話でそれらが効いてくる素晴らしい幕引きがみられて大満足。結果的に期待以上の満足感が得られた。有難うございました