アニメられる日々

アニメ感想ツイート保管庫(暫定

GANGSTA. 3話

ある日の便利屋事務所の朝。アレックスが目を覚まし、窓から外の、かつて自身が娼婦として立っていた路地裏の階段あたりを眺め、微笑む。それから室内のゴミ箱に目をやると、ミントタブレットの空ケース。「楽園」を意味する銘柄のそれを見て、かつての境遇からは考えられない幸せを、このとき彼女は噛み締めていたのかもしれない。

今回は、そんな彼女が、ウォリックとニックの便利屋家業の内実を知る回。ウォリックはジゴロで、今日は仕事…女性客からの電話があるからということで、これまで電話番をしてもらっていたアレックスをニックのしごとに同行させる。

ニックの仕事に同行する途中、タバコ屋の婆さんとのやりとりで、ウォリックの過去につながる事件を知るアレックス。さらに道中で顧客と別れるウォリック、マフィアの修羅場などを経てニックがかつてマフィアに雇われていたことも知る。

ウォリックとニックがこの街で生きていくために、なりふり構わなかったこと、今もなりふり構っていないこと、このどうしょうもない世界でこの二人と一緒の時間を過ごすことが、アレックス自身にとっての楽園生活なのだろうか。そう自問しているかのような、描写で語るエピソードがしみじみ良い。

ニックの抱える聴覚障がいに対して、はっきり差別が存在することも描かれて、どうしょうもない街のどうしょうも無さが補強される。欲望渦巻く街で、生きていくために必要と有らば騙し、殺してでも生きていくということが、自由であるようで自由でない、本当の幸せなど得られないという諦観が切なく、でも本当は幸せに暮らしたいんだという本音も滲んでいてなお切ない。

大量の薬が必要で、それでももう余命幾ばくもないという女性に、ニックがどういう背景で、どういう心境で寄り添っているのか。こちらもアレックス視点で、観るものがアレックスと同じ心境になって思考をめぐらせるという描き方で味わい深い。

ある日の便利屋事務所の朝。ここは自分の楽園ではないのかも知れない、そう思うに至ったであろうアレックスが、事務所を去り再び路地裏の階段に居場所を戻す。どこに行けばいいのかわからないんだね、という手遅れ感がまた悲しい。この街に取り込まれて身動き取れ無くなる前に街から出て行った方がいい、と言うウォリックに、自身の境遇に疑問を抱いたことはないのか、とアレックス。どちらの答えも見えぬままの締めくくりと憎い演出。それぞれの行く末を観続けてみたい。アレックスは今居なくなるには惜しいキャラなので、残ってくれるといいけど。