アニメられる日々

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ガッチャマンクラウズインサイト 10話

くうさまが子供の前でその親を喰った、その事実を撮影しマスコミに提供する理詰夢、それをセンセーショナルにかき立てるマスコミ。責任を問われるゲル首相へのインタビューが決定打となり、「空気」が一変する。

ゲルのフキダシ能力から生まれた「くうさま」は、ゲルの理解の及ばないもの、人々の個々の気持ちから生まれた幻想の総意・「空気」であった。そのためにその「空気」が一変すると、ゲルに牙を剥く状況も現出する。という件が面白い。理詰夢が腑抜けた累からクラウズを奪って赤クラウズ集団でくうさまもろともゲルを駆逐するという展開を予想していたけど、この展開は上手い。「空気」を具現化したくうさまが、その床屋のサインポール的な色合いに象徴されるようにクルクルと一変する、その恐ろしさが象徴的に描かれている。

帰省したつばさが、ゆるじいの「空気」に纏わる辛い体験を教訓として授かり、つばさが「空気」を作ってしまったことを気づかせつつ、困ってる人が目の前にいたら考えるより先に体が動く、その良さを評価しつつ原点に立ち返らせる件が熱い。また、もう行くね!というところで待て!深呼吸してみろ…と頭だけでなく体全体で理解を深めさせるダメの押し方が素晴らしい。本当にきちんと理解することが大事なんだ、と。ゆるじいの深呼吸で始まった冒頭が思い起こされて、その呼吸が完成し、つばさがガッチャマンとして翼を羽ばたかせる、という流れに痺れて涙が溢れてきた。

腑抜けた累の下を彼が拠り所としていたくうさまが去り、いよいよ自分を見失っていく累に対してXが必死に語りかけるところもまた熱く、人工知能であるはずのXが、ひとつの人格として累に寄り添い、あなたがダメなら私が…とハッパをかけるところが健気で、その健気さとそれに応え立ち上がる累にまた涙々。

どうしてみんな僕のこと嫌いになったんだろう、というゲルに対して、はじめちゃんの考えるっす!な流れがまた面白い。みんなの意見を汲み取って、みんなの望むようにしたい。じゃあゲルちゃんは何がしたい?考えるっす!と、自分のない宇宙人に自分を見つめさせる作業をというのはユニーク。そうして考えることで、吸い込んだフキダシ・ひとりひとりの気持ちを吐き出したら、登場時のちんまいかわゆいゲルちゃんに戻って、つばさちゃんに会いたいから…でまたまた涙々。もう吸っちゃダメだぞ!

つばさと累とのそれぞれの挫折から再起に至るまでを交互に描いていくところが上手く、ゲルちゃんも含めて3つのケースを同時進行することで5倍も6倍も盛り上がっていったように思えた。

コンニチ的な空気の問題を、あえてシンプルに描くことが、とてもうまく行っているようにみえる。痛烈な批判が込められてるけども、人の未熟さ愚かさを作り手が見下すでなく、我が事のように深刻に、真摯に捉えていることが伺えて、また人にも社会にも未来にも悲観的でなく、希望を見出そうというところが好感。政治や思想や世相をモチーフに啓蒙しようという作品はこうでなくては、と改めて感心させられた。