アニメられる日々

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アイドルマスターシンデレラガールズ 23話

仕事を早退し、一晩考えた結果、養成所に戻ってレッスンをやりなおすことにした卯月。

プロとして活動中の彼女がなぜ…?と動揺する一同だけど、彼女と深く関わっている凛や未央と違って、他のアイドルたちがさほど深刻にならず、普段通りの雰囲気に戻っていくところが怖い。他のアイドルたちは卯月は大丈夫だと思っている。それは卯月がそれだけ皆にその内面を隠し通してきたということ。凛や未央でさえ、いやおかしい…とは思っていても、卯月の心中はまるで理解できていない。事態の深刻さはその時点では誰も把握できていないので、風景もなにげないものだけど、室内の明度、カメラワークが、なにげない風景に深刻さを添えている。

養成所でひとりレッスンに励む卯月、様子を見に来る武内P。どこかで見た風景…画的にも、彼女自身にとっても、振り出しに戻ってしまった。次の日も、その次の日も、同じパートの振りを黙々と踊る、踊る。日の差し込まない養成所で。その光景が辛い。卯月の変調が、じわりじわりと感じられる。

様子のおかしい卯月を元気づけられればと武内Pが立案したニュージェネの企画を、いつもならガンバリマス!と飛びつくところを、今の状態では…と断るところでいよいよ重症だなとわかる。もう頑張れなくなっていると。連絡の際の様子も相まって、卯月の様子がいよいよおかしいと居ても立ってもいられなくなる凛と未央が養成所に乗り込む。そうなるまでの、武内P、凛、未央それぞれの卯月に対する遠慮による時間経過の描き方がまた現実的な質感がある。もっと早く気付いてあげられれば…とそう上手くはいかないものなのだと。

凛と未央が事情を聞くと、自身が至らないから…アイドルになるのが早すぎたのかも…だからもっとレッスンを頑張らないと…という卯月。ごまかさないでよ!ととうとう凛が怒る。凛がアイドルになると決意するきっかけとなった、卯月との思い出の場所に連れて行き、本音で語れ!と言ってるのに、頑なに内面を晒すのを拒み首を振り、未央に救いを求める視線を送ったりする卯月…なんて弱い子なんだろう。ジャージに革靴、ダッフルコートとちぐはぐな服装の彼女は、魔法の解けた灰かぶり姫のよう。とても小さく見えて、切なくて涙が溢れてくる。

凛や未央が自分を置いていったことをどうこう思っているわけじゃない、本当に頑張ろうと思ったんです、みんな何かを見つけて、でも自分には何もないから、頑張ろうって…と気持ちを整理している内に、自分でも気づけなかった不安の種を見つけた卯月の、「頑張ったんです…!」は凄い。頑張ろうと思って、頑張ったんです!わたし頑張ったんですよ!と。

「武内Pは自分のいいところは笑顔ですって言うけど、そんなのだれでも出来るもん!!」のあとの、「何もない…わたしには何にも…」ここが一番効いた。「何もない」ということ、自分として、アイドルとして、自信となるもの、武器となるもの、それが何にもないということの不安、怖れ。頑張っても頑張っても、それが未だに掴めていないということ。その深刻さが表情で、声の演技で、台詞の言い回しで力強く描かれていた。

「何もない」ということの深刻さに、彼女が抱える不安や怖れを汲み取って共に涙する凛と卯月に、こちらも泣かされてしまった。違う!卯月の笑顔は伊達じゃないんだ!そう言って励ますことしか出来ないところもまた切なく。卯月の笑顔はとびきり素晴らしいし、凛に未央、武内P…いろんな人に力を与えてくれた。でも、この励まし、この想いは卯月に届くのだろうか?同情や気休めと思われないだろうか?そんな凛の心情を勝手ながら想像してまた涙々。

「私達さ、もっかい友だちになろうよ!」そう言って、卯月の気持ちを皆で理解し合えた今、ここからまたスタートだよ!な未央が、うちら…帰るね、と名残惜しそうに切り出す。心通わせられたか不安が残るけども、言いたいことは言ったし、卯月もそうだろうし、別の事情があって帰らないといけない、という微妙な雰囲気の演出が上手い。そして、心通わせられたかまだ不安な凛が、別れ際に涙声で「卯月…待ってるから…」とダメ押しするところでまた泣かされた。大切な大切なお友達だけども、ずっと寄り添ってはいられない、信じるしか無い。その頼りなさが胸を打つ。

後日、346プロに戻ってきた卯月。時計の針は12時ちょうど。自分の靴で城に戻ってきた卯月が、12時過ぎの魔法を手に入れる展開に期待したい。