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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 9話

名瀬の案内でテイワズ本拠地を訪れた鉄華団。テイワズの首領マクマード・バリストンはオルガらを気に入り、名瀬とオルガの義兄弟の盃の件と鉄華団のテイワズ傘下への加盟を快諾する。その一方で、クーデリアは自身の目的が戦争の引き金になることをマクマードに思い知らされる。覚悟があるなら協力するというマクマードに対し、猶予をもらい考えるクーデリア…。

海外の高級リゾートのようなコロニーと四方を澄んだプールに囲まれたマクマード邸など、高級感の演出が振るっている。実質マフィアのテイワズを、我が国のそれに当てはめるところは苦笑ものだけど、新鮮味の演出以上の意図はないと納得することにした。

鉄華団の当面の食い扶持は確保できたけども、マクマードとクーデリアの話が残っている、ということで、待つ身の面々の暇の潰し方をもって登場人物たちに現実的な質感を付与する抜かりのない展開。オルガにとっておそらく初めての自身の指標となる目上であろう名瀬に、気恥ずかしさを覚えつつも習う姿勢が初々しく、またそれが「初々しい」と思えるようにうまく配慮された展開。パーッとやろう!と器量を見せても酒に打ちのめされるオルガ、そして彼の背伸びを察する謎の女性…。彼女はフミタン絡みかな、と思ったけどそれはとりあえず置いておく。子どもたちはごちそうやお菓子にときめき、年長組は酒に女性にと大人の階段を登らんとし、あるものは酒に打ちのめされ、ある者は経験を積んで自信を持つ。一方で、それに眉をひそめる潔癖な者もいて、男慣れした女性たちが男を語れば、良い嫁さんになるよと言われて素直に喜ぶ子もいたり。団長としての不甲斐なさを酔いのうちに自覚させられたオルガが、年少の子の更に年少の子に対する思いやりの行動に少し勇気づけられたかもしれないシーンが心を打つ。

この息抜きでの各々の人間模様が、模範解答としてでなく、良し悪しはともかく一般的で「あるある」と頷けるもので唸ってしまった。一般的な男女観、そこから生じる思考と言動、一般論的性質の各々の言動をもって展開していくことで、彼らの抱える問題が絵空事でなく現実的な問題として深刻さを増す。勇気ある…というより憚らない踏み込んだ作りこみが嬉しい。

クーデリアとマクマードとのやりとりで、クーデリアが見せた三日月への同意を求める姿勢と、それを察して「それはあんたが決めることだ」と突き放すシーンもまた良く。それでも自室に戻ればフミタンにすがろうとするクーデリアの弱さ、三日月同様に突き放そうとしてもそうはなれないフミタンのクーデリアへの気遣いも味わい深い。フミタンが何かを隠しているのは明白だけども、クーデリアを思う気持ちは偽りのないものだろう。と、思う。思いたい。フミタンは裏切らない!

(咳払)

9話にしてようやく地球へ!となったけども、それでもいろいろなことがあったように思えるのは、世界規模の出来事よりまず人々のドラマに軸足があり、かつじっくり描いてきたからであろう。主張が先にあるのでなく、皆が食べていくためにはどうすればいいか、そこから主張へとつなげていく。現実的にできることからコツコツと…という物語としての主張の軸足が、ドラマによってここまでうまく補強出来ている。ここから先、戦争をどう描いていくかはひとつ評価の別れるところとなりそう。期待しつつ次回を待つ。