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コンクリート・レボルティオ 超人幻想 9話

神化16年12月、ハワイ。米軍は、殺しても死なないひとりの日本軍超人と遭遇する。時は流れ神化42年10月、川崎のエーテル工場で爆発事故が発生。近隣の住民にも被害が及ぶ惨事でありながら、奇跡的に生き残った家族がいた。その家族は救助に来た救急車を奪って逃走、その後行方知れずという奇妙な出来事に超人が関与していると睨んだ超人課は事件の調査に乗り出す。ジャガーは自身の能力で過去にその家族にあったことがあり、家族の人数がひとり欠けていることに気づく。家族の能力が「不死」ではないかと思い至ったところで、アメリカの超人組織からもたらされた神化16年に捕えた不死の日本軍超人がいるという情報と繋がる。アメリカ側と交渉し、事態が動き出すのはそれから2年後の神化44年9月の事であった。

今回は辻真先さん脚本回。国民的アニメ「サザエさん」の第一回の脚本を手がけた氏らしい、磯野家を思わせる「森野家」に焦点を当てたエピソード。サザエさんは海に関する名前のキャラが多いが、森野家は陸にちなんだ名前で揃えてきてるのが可笑しい。森野家においてサザエさんに相当するキャラが「早苗」ってのがまたGOOD。また、「郵便局はもう看板?」「毎度ありンした~」「あんにゃろめモウレツだ!」など言い回しが味わい深いところもちらほら。風朗太や輝子などコミカルに回してくれるキャラが、画的にも賑やかにしてくれて楽しかった。

今回は、神化44年9月、超人課を離れたばかりといった感じの爾郎と超人化との対立が伺えて、爾郎が超人課を去った理由もくっきりしてきた。もっとも、ここまできたらもう説明もいらないのだけど。これだけ時系列を前後させて、それでも理解に苦しむことのない展開にもっていく手際が本当に見事。それが上手く行ってるから、今回のように「正義とは」を脇に置いて、「生と死」に焦点を当てるエピソードも作れるのでしょう。

超人というよりも地球とともに生まれた不死の生命体といった趣の森野家が、30年余り家族と離れ離れになり、ようやく再会という段になってまた一悶着という事態に疲れを見せる。46億年近く生きてきて、離別など何度もあっただろうに、ここへきて疲れを覚え始めたというとこがポイント。46億年の人生の中で、数千年程度の人間社会、とりわけ近代というのは、「不死」という特性を持つがゆえに世を忍んで生きていく必要がある一家にとって、とても生きづらい時代なのだろう。家族が皆揃ったところで、皆一緒ならもはや思い残すこともないと軽やかに死を選択する一家が、あらゆる生命を溶かす毒液に身を投じ、ようやく宿命から放たれた…と思いきや、再生し不死の不死たる所以を見せつける。一家にとっては世を忍ぶ生活から逃れられないという不幸にも思えるけども、再生したメグミが大きく息を吸い込むシーンからは「誕生」の劇的で前向きな力強さがあった。

死ねないというのも困りものである、と死に達観した様子を見せても、でも喜々として死を選択したわけでなく人生に失望したからであった…という自殺を肯定しないフォローが上手いし、一家を疲弊させたのは近代の社会制度やそれによって生じる軋轢であった…と風刺も効いている。そして再生を通して「生」を輝かせる。不死の一家の選択を通して、人生・尊厳死・社会制度と個人・誕生…死生観から批判から希望まであらゆるメッセージを盛り込みつつ、物語としてさらりとスムーズに進行していった。「正義とは」の物語の折り返し地点的役割の回だけど、贅沢な折り返し地点だった。