アニメられる日々

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俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」としてゲッツされた件 総感

一般には公開されていない名家のお嬢様のみが通う清華院女学校は、生徒たちが世間を知らないまま卒業してしまうため、卒業生が社会に出て俗世に触れた際にしばしば失調をきたすという問題を抱えていた。解決策として、庶民の代表・「庶民サンプル」を招き、共に学園生活を送ることで生徒たちに俗世への耐性をつけようと試みることとなった。白羽の矢が立ったのは、高校の普通科に通う普通の頭脳と普通の身体能力と普通の容姿の「ベストオブ普通」・神楽坂公人だった。お嬢様学校に有無を言わさず「ゲッツ」された公人とお嬢様たちの学園生活が始まる。

「普通の男の子が主人公」というありふれた設定の説得力の与え方がまず秀逸で、彼が主役である理由が「普通の庶民だから」ってのがもうすでに可笑しい。そんな普通の高校生・公人がお嬢様学校に「ゲッツ」されるところから始まるスタートの切り方が抜群に良かった。シュールかつ賑やかなOP映像も相まって、つかみはバッチリ。

原作のタイトルは「俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件」。アニメ化するにあたって「拉致」が「ゲッツ」に改題された理由はお察しとして置いといて、改題されたことで「ゲッツ」と言えばこの人、と言わんばかりにダンディ坂野さんとのタイアップを展開。「ゲッツ!監修」というクレジットでどこまで作品世界に関わってくるのか不安はあったけども、作品との関わり方・距離のとり方に節度があり、これはタレント側とアニメ制作側とが、良い作品にしたいという思いがあってこその結果だと言って良く、がっつりタイアップ展開しているのに俺が俺がと主張してこないから、途中で1話まるまるダンディ坂野リスペクトなエピソードを持ってきてもまるで嫌味がなかった。それが嬉しくて、終始温かい気持ちになれた。2ちゃんねるネタやパロディなど、扱い方によっては不快にさえ思えてしまうネタの扱い、気配りにもそれが現れていて、改題した判断も含めて視聴者のリアクションを先回りするセンスに優れている。

世間を知らないお嬢様たちが、公人から「庶民」を学ぶ。漫画だったりゲームだったりカップめんだったりファーストフードだったりネット動画だったりお笑い番組だったり…庶民も庶民なサブカルチャーやジャンクフードだけども、それにいちいち感動を示すお嬢様たちの様子がまた可笑しく、ひとつのカップめんを大勢で取り分けて「食べこぼし」にも似たそれを高価な食器に盛り付けてすする様子などはなんとも可笑しかった。作品としての軸がしっかりしている。

庶民的に気さくでも人見知りで友達のいない愛佳、お嬢様オブお嬢様麗子、天才幼女白亜、変態剣士可憐と、ユニークなキャラクターも魅力的で、またみんな忌憚なく感情をぶつけあいつつそれでいて友達思いで、その関係性からくるドタバタに笑い、根底にある友愛に涙する。サービスシーンも多分に盛り込みながら、公人の異性への興味に正直なリアクションがコメディとして良い方向に作用して、こちらも嫌味のない心地いい雰囲気で終始大いに楽しませてもらった。

その他のキャラも魅力的で、そっちを掘り下げられなかったのは寂しくもあるけど、1クールで庶民部の魅力は十分に引き出せたのだから、終わってみれば好判断とも思える。メイドの九条さんの「ずっと目覚めなければよかったのに」の意味が変わるミステリアスなシーンは凄く良かった。幼なじみの恵理も含めて、次期あることを願いつつ、そのときに掘り下げてもらえることを期待したい。

最後の最後に持ってきた恵理のPV風EDがまた素晴らしかった。本年度ED10選もう挙げちゃったけど、もう少し待つべきだった…。