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昭和元禄落語心中 2話

八代目友楽亭八雲が語る、八雲と助六の友楽亭入門当時とその歩みを振り返る物語。坊っちゃん…後の八代目八雲は、芸者の家の子であったが、男子である上に足を怪我してしまったために踊ることも出来ないというので、知人の落語家の家に預けられ…要は体よく捨てられてしまう。そんな坊っちゃんが、友楽亭の門の前に立った時、割り込むように飛び込んできた汚い身なりの元気な男の子。後の二代目友楽亭助六であった。

芸者の家の子でそれなりに裕福であるように伺える坊っちゃんが、落語家の家に預けられたのは、単に生活が苦しかったからではなく、もっとおぞましい心理…坊っちゃんに対する親の嫌悪が伺えて切ない。そんな何不自由ない環境で、男子でありながら芸者の子として厳しく躾けられたであろう八雲の、女性的に華奢で端麗な容姿に、彼の背負う背景がその色気をより妖しく引き立てる。単純に視聴者の期待に沿ったというだけではない説得力あふれる色気の描写にシビれた。その仄暗い、今にも消えそうな弱々しく儚い色気は、駆け出しの落語家の力量ではか細く頼りないことをことさらに強調する皮肉な結果となるのだけども、後の八雲の妖しくも艶やかで優雅な姿を知っていると、なるほどそこに至るまでにこういう経緯が…と深く頷ける。人に歴史あり。

菊比古という名をもらった後の八雲が、初の高座で空回りする。こなすだけの落語。その退屈さを視聴者も覚える演出もまた見事。演目の中で視点が切り替わっても、観る者にとっては菊比古ひとりしかいない退屈な光景、客や楽屋裏のリアクション…それでもなんとかこなさねばという菊比古の焦りが、弱々しい声が劇伴に徐々に押しやられる様子も相まってひりひりと伝わってくる。

満を持しての初太郎…後の助六の高座。開口一番、目の覚めるような張りのある一声に、観客だけでなく観てるこちらまで目の覚める思い。初太郎というキャラ、山寺宏一という声優、そういったところへの注意力を吹き飛ばすほど、感情表現豊かな演目に聞き入ってしまう。菊比古の演目との見事な対比となった。

落語をよく知らない僕のような者にも、つまらないものはつまらない、面白いものは面白い。そう明暗をはっきりさせる手際が素晴らしい。専門的深みや濃淡でぼかさない親切でとっつきやすい作りは有難い。

劇伴のジャズがしっくり来るのもユニーク。啖呵の爽快さ、感情の明暗、演目と現実…落語とその世界に生きる人々の、ユーモアとぶつかり合う感情と、芸人ならではの各々の高い感受性から育まれる物語に、ジャズは親近感を持ってまとわりつく。庶民的でもスタイリッシュな雰囲気にしてくれて、落語の世界を身近にそして刺激的に感じさせてくれる。この雰囲気がたまらなく心地いい。