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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 16話

労働組合によるデモ行進が始まってしまったドルト3の街を、フミタンを探し彷徨うクーデリア。ようやくフミタンを見つけたと思った矢先、労働組合のデモ隊に捕まり、運動の渦中に引っ張りあげられてしまう。群衆の中にクーデリアを確認したギャラルホルンは、デモ隊の暴走を装い鎮圧を開始する。

 

幼いクーデリアとフミタンの思い出を、今に重ねる切なく悲しいエピソード。あの頃、手持ちの飴玉も心許ないのに無邪気に施したばかりに、スラム街の深淵に触れてしまう、その頃のままに、愚かしいほどに前を向いて、只々希望を追い求めるクーデリア…。あのスラム街で、膝を抱えてうずくまっていた子どもたちと同じ道を歩んできたフミタンが、その無垢な慈愛に嫌悪し、しかしながらそれでも前を向き続けるクーデリアに、ジャンヌ・ダルクの聖性を見出して無自覚に涙を流す。その時にはもう、自身のクーデリアに対するわだかまりは解けていたはず。フミタンが本当に嫌悪していたのは、それでもなおクーデリア謀殺に加担せざるを得ない、自身の弱さにあったのかも知れなかった。

幼い頃から正義感が強く、そしてその行動をエスカレートさせていくクーデリア。どこかで自身の無力さに気付いて、引き返して欲しかった。そんな思いもあったのかも知れない。でもそうならないままとうとう運命の日を迎えてしまい、土壇場になってクーデリアを謀殺の場に誘うのをためらった。積極的にでなく、思考停止の中で流れに身を任せるように…。今日に至るまでの、フミタンのクーデリアに対する想いが、回想によってピタリと符合して、デモ隊との衝突の中で奇しくも謀殺計画のレールに乗ってしまったクーデリアを、間一髪のところでフミタンが身を呈してかばうところまでがストンと腑に落ちて、なんでこうなったんだ、という憤りは湧いてこなかった。ただただ悲しかった。こういう結末を迎えざるを得なかった、無垢な慈愛の精神を持つ者と、持たざる者の怨念を抱えつつ、その無垢な慈愛の精神を愛おしいと思ってしまった者の、宿命の中で決定的な溝を抱えたまま分かり合えたこと、そして回避不可な別れ…。

フミタンが救われる可能性は、クーデリア謀殺に加担していた時点ですでに無かった。どこかでクーデリアに味方すると決め、ノブリスとの因果を断ち切り、鉄華団と話しあえていたら未来は変わったかもしれないけども、鉄華団がノブリスと渡り合えると信じることができるようならこんな問題は起こらなかっただろう。自身の境遇に悲観的だったからこそ、クーデリア謀殺に加担せざるを得なかった。クーデリア謀殺が成功しても失敗しても、消される運命にあったのは想像に難くない。どう考えてもこうすればよかったのに、という解が見つからないフミタンの境遇が不憫でならないし、とても上手い筋の通った設定。

ぽっかりと心に穴が空いたような視聴後感だけども、クーデリアの今後の活躍に期待したい。フミタンの見た希望、戦場を駆ける革命の女神となるか。