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昭和元禄落語心中 3話

昼は学校・夜は寄席という忙しい日々の中で、落語漬けの初太郎(二代目助六)との実力差に焦る菊比古(八代目八雲)。戦争の影響で落語界もどんどん息苦しくなり、自身の繊細さや艶やかさを活かした廓噺や艶笑落語に活路を見出そうにも、それも禁止のご時世。そしていよいよ戦局が極まると、師匠は初太郎を連れて満州へ慰問に行くので、菊比古は八雲夫人と共に疎開するよう言いつけられる。

 

意識して声を張り稽古する菊比古に、らしくねえ、腹から声出さなくても出来る落語があるじゃねえか、と初太郎の勧める落語が廓噺遊郭ネタ噺)や艶笑落語(下ネタ噺)と、いいところを突いている。高等科に通う身の学生らしく照れてみせるけども、厄介払いされたとはいえ、芸者の家で厳しく躾けられて染みこんだ繊細さ、妖艶さは菊比古の個性で、おそらく当人もなるほど、と自信を持ったかもしれない。この件の何が素晴らしいかって、キャラデザがしっかりストーリーで生きていること。線が細いのに漢を演じてみる的なちぐはぐ感がなく、中性的でどこかこの世のものでないような妖しさを、まずビジュアル面から説得力をもたせていて、生い立ちから経緯までがバッチリ噛み合っている。下座見習いのお千代ちゃんが手を怪我して三味線が弾けない!というところにスッと入っていって弾いて見せて…その意外性に妖しい美を見出したお千代ちゃんが惚れるのも納得だし、疎開先でもちゃっかり恋愛してて、いやどちらかというと女性の方から寄ってくるタイプなのだろうけども、セクシーなんでしょうな。でも当人は落語のが好きらしい。後の八雲に女性や家庭のにおいがしない理由が頷けたけども、それは置いといて、そこまで伺える恋愛の描き方も実に上手い。

さて、今回は、それまでは生きるために落語に取り組んでいた菊比古が、落語にちょっと興味が出てきたと思ったとたんに落語のほうが遠ざかって行っちゃうという、なんともままならないお話。初太郎の影響で、恋というものを学んでみよう、というのもなんとも勤勉で可笑しいのだけども、恋の最中も、戦時下にあっても、疎開先でも、疎開先の恋の最中にあっても、落語、落語、落語。厄介払いされて飛び込んだ落語界、好きでもないのにやっていた菊比古が、後に八代目友楽亭八雲としての地位を築くに至るまでのその転機、どんどん落語への想いを募らせ、虜になっていく様子がさり気なく、かつ力強い説得力をもって描かれた。耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、バラバラになった友楽亭が再結集!パアンと弾けるような戦後の高揚感と、初太郎と菊比古の快進撃が始まる!という期待感を同時に爆発させる展開も実にドラマチックだった。

さあこれから、という時に、颯爽とあらわれたみよ吉さん。林原めぐみさんの声がたまらなくセクシーですねえ…。後に助六(初太郎)の嫁さん、小夏の母になる方だけども、松田さんのウロタエ方からして、この時は師匠の火遊び相手だったりするのだろうか…。彼女の登場で痛快な展開になりそう。