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昭和元禄落語心中 4話

師匠の家を出て二人暮らしとなった菊比古と初太郎。菊比古が稽古の時間を削って喫茶店のボーイなどで一生懸命貧乏下宿生活を支える一方で、稼いだ金では足りずに師匠からもらった紋付きを質に入れてまで酒代に替えてしまう初太郎は、助六という名をもらって落語にも自身に満ち溢れている様子。稽古が足りぬと焦る菊比古に、いやむしろ稽古のし過ぎ、真面目すぎるのがいかんと、師匠は満州から連れてきた愛人で芸者のみよ吉を菊比古と会わせることで、菊比古の心のコリをほぐそうと試みる。

 

風景に戦後のGHQ統治の混沌も微かに忍ばせながら、そういう大壇上からの辛気臭い話は一切なし!粋に陽気にいこうじゃねえかって雰囲気が、落語家たちを中心に据えた世界をポジティブでモダンな雰囲気にしている。それを完成させてるのが声優陣の演技とジャズの劇伴。心底楽しいと思える娯楽的な出だしだ。雪が降る様子を「白いもんがちらちらしてらあ」と評するセンスも粋でGOOD。芸人らしい感性からくる台詞回しのひとつひとつにもうっとり。ケチな菊比古を皮肉った助六の演目「夢金」も良くって、ストーリーを意識の片隅に置いてしばし聞き惚れてしまった。この「夢金」、いろんな解釈によって喜劇にも悲劇にもなるそうで、喜劇を選択した助六に「迷いがない」と感嘆する一方で焦る菊比古を演出してるのだけども、目先の利益、日々の糧を追うよりも、人として大事なことがあるのではないか、という菊比古への含みにも思えた。ともかく、今回は落語一辺倒な菊比古が、みよ吉との出会いで落語以外に熱を上げるものができるのか、というところに興味を惹かれた。

今回は、後に小夏の母となるみよ吉、つまり助六と結ばれる運命にあるとわかっているみよ吉が、師匠の愛人として登場するところがまず面白い。まず貧しい下積み時代に自分の落語が見出だせず、それは稽古が足りないからだと焦る菊比古の様子を描いておいて、いやいや菊比古は真面目過ぎんだと、遊びを知って少し隙を作るべきだと、その隙に「色気」が出ると、人の魅力の一つの「色気」を、今の菊比古に不足してる要素、欲しい要素だというその師匠の指摘に思わず唸ってしまった。そしてここがまた面白いところだけども、みよ吉を助六に会わせるのは心配だけども、菊比古なら大丈夫だろうという師匠の誤算。男ならではの誤算とでも言おうか、結果、菊比古のみよ吉に対する素っ気無さは、逆にみよ吉の心に火を点けてしまった。

芸者の家で育ったという菊比古と芸者であるみよ吉との共通点、中性的で繊細な容姿に、落語一筋で女性になびかない様子、そのひとつひとつがミステリアスで魅力的に映るのも納得。みよ吉が早々に助六と距離を詰めるでなく、まず菊比古に惹かれていくというのはなんとも、その後を先に知らされてるからこそなんとも面白い。なるほど、後に八雲が、小夏や助六、みよ吉方面に複雑な表情を浮かべるのも頷ける。この時の思い出は、美しい友情や愛の物語という単純なものでなく、深い深い人間ドラマがあったのだな、と。

真面目、いや落語に無垢で一途な姿勢をみせる菊比古が、みよ吉の猛烈なアプローチでどう変化するのか。二人の様子が落ち着いた、それでいて情熱的に艶やかに描かれていて、ドキドキと胸が高鳴る情感あふれるエピソードでした。