アニメられる日々

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灰と幻想のグリムガル 5話

マナトの死後、ハルヒロ・ランタ・モグゾーは酒場に入り浸るようになり、チームとしてのまとまりはバラバラ、方向性も見失っていた。そこで出会ったキッカワの紹介で、マナトの空席を埋めるべく神官職のメリイが加わるが、メリイの協調性のなさからか、チームの雰囲気は一層悪化。ユメやシホルの態度から、ハルヒロはマナトが居なくなって日も浅いのに新メンバーを加えたことへの後ろめたさも感じていた。

 

マナトを埋葬し、皆が悲しみに暮れるなか、いつまでもじっとしててもしょうがないというランタの無神経に腹を立てビンタするユメ、このビンタした後のユメの様子が、本当はランタだって悲しい、そんなことはわかってるんだけど…と伺えて味わい深い。その後酒場に向かったランタに合流するハルヒロとモグゾー、ここからの…いやこれまでも、極めて現代的な感情と思考による各々のやり取りが一貫して描かれている。「ここに来る前の記憶を無くした現代人」が、「ここに来る前の感情と思考と価値観を保ったまま」ファンタジー世界でとりあえず協力して食い繋いでいくという物語の妙味をしっかり捉えている。酒場で不平不満を述べても、よし!と誰かが音頭を取るでもなく、そうこうしてるとチャラいキッカワが現れて、マナトの死を知ってもなお軽薄に絡んでくるのだけども、声を荒げそうになってもううん…と飲み込むところ、声を荒げないのでなく、文句も言いたいのだけど、言ってもしょうがないだろうと飲み込むこの微妙な感情の描写がなんともリアリスティック。紹介で招いたメリィの協調性のなさに、唯一漫画的に絡んでくるのがランタで、皆不満を抱えてるはずなのに、表情にも判別しづらい沈黙の様子がまた絶妙。ひりつくような関係性の緊張感がたまらない。

皆、「ここに来る前」の性格をこじらせていて、でも「ここに来る前」の記憶がない、つまり自分が生きる意味、どこから来てどこへ行くのかというモチベーションがすっぽり失われた状態で「ここ」に放り込まれてるから、とにかく食っていかねばならない。協力しなければならない。現代人視点ではファンタジー世界であっても、「ここ」はモンスターを倒して生計を立てていく世界。働かなければ死であることは現代人でもわかるから皆協力して頑張ってきたけど、「敵に殺される可能性」「負傷して死ぬ可能性」を失念していた。それは突然訪れて、キャラたちも、そして観るものもそこで初めて思い知らされる構造。この物語は、生きることが当たり前、大前提となってる現代人に、サバイバルを通して生の緊張感を喚起する物語であった。

また、生と性が密接に関わってることからも逃げない作品でもある。仲間の死という悲しみからのすれ違いによる衝突、それによる相互確認・理解…信頼が安心感に、温もりが触れ合いに…と、ハルヒロとユメの一連のシーンには生と性が激しく渦巻いていた。