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昭和元禄落語心中 11話

助六とみよ吉の子らしい小夏に蕎麦を奢ってやる菊比古。菊比古に警戒心を隠さない小夏だったが、彼が落語家と知ると態度を一変、菊比古を家まで案内する。

 

落語界から追い出された助六と、落語家に捨てられたみよ吉が東京を離れてどうしてるかといえば、落語そのもののような助六はみよ吉に落語を禁じられ他に生きる術を知らず隠居の身、みよ吉は水商売で生計を立てるという出鱈目っぷりに、観てるこちらも呆れる。そんな中で、母に対するわだかまりを抱えてるとはいえ、健やかに快活に育ってる様子の小夏が眩しく微笑ましい。家計はみよ吉が支えてきたのだろうけど、飲んで寝てるだけのような父の助六に小夏が尊敬と愛情を抱いているのは、真打級の助六の技量と彼の落語に対する愛を目の当たりにして、それで食べていけるはずの父が母にその可能性を奪われてるように映ったからでしょう。事実はそれほど単純ではないけども、今の小夏がそれを知る由もない。

事情がわかれば、みよ吉が出て行ったのはむしろ好都合だった。働き者の小夏を味方につけ、荒れた家の掃除から、腰の重い助六を引っ張っていく菊比古と小夏の様子が眩しい。旅館で落語の席を設けてくれる話もあって、助六の再出発のお膳立てが揃う様子にもワクワクした。あとは落語を離れてすっかり冷めてしまった助六の情熱をいかに再燃させるかだけども、この過程の描き方がすごく良かった。

小夏の髪を切ってやる菊比古、ここで小夏が父と母をどう思っているかが明かされる。母とのわだかまりの話から女性の小夏が落語をやってはいけない、と菊比古がその理由も添えて諭すと、それを言質に菊比古に落語をやってとせがむ。落語が好きで、同時に父・助六を尊敬してやまない小夏のリクエストは「野ざらし」。自身の守備範囲外の演目を思い出し思い出し演っていると、たまらず助六が飛び入りしてくる件は天の岩戸の神話のようで、また「真打登場」も掛かってるのかはわからないけども、なんとも心躍る愉快な雰囲気。本来一人で演る落語の演目を、助六が男性、菊比古が女性を演じることで、双方の長所が良く出てて、また漫才のようでもあり、芸能文化の広がりや、かつて助六の目指した時代に変化していく新しい漫才の可能性も示唆してたりと、これまでの集大成とも言える幾重にも示唆が盛り込まれた楽しいシーンだった。観る人がいてはじめて落語は成立するんだと言った助六が、愛娘を前に演りきったその胸中、突っ伏して見えない表情は言わずもがなで、涙を誘う締めくくりも見事だった。

さて、一方で何を思うのか刹那的に生きるみよ吉。助六がまーた落語を…なんて思ってると菊比古も一緒にいると知って…これは一悶着ありそう。小夏が汚らわしいと嫌悪する生き方しかできなかった境遇を思うと、彼女にも救いがあって欲しいと願わずにはいられない。