アニメられる日々

アニメ感想ツイート保管庫(暫定

灰と幻想のグリムガル 総感

目が覚めたら見知らぬ場所に居たハルヒロと十数名の若い男女は、それ以前の記憶が無い戸惑いを抱えたまま、案内人からこの世界・グリムガルで生きていくための最低限の説明を受ける。「死にたくなければモンスターを倒して身ぐるみ剥いで売れ」「それ以外に生きる道があると思うな」事情とすべきことを早々に把握したレンジが見込みの有りそうな者を連れて行ってしまったため、マナトをリーダーにハルヒロ・ランタ・モグゾー・ユメ・シホルら残された物同士でパーティを組むことになった。記憶こそ無くしてるものの「携帯」「ゲーム」という言葉が存在する世界から来た少年少女達が、生活のための糧を得る過程で生じる様々な困難と共同生活での関わりの中での成長を描いていく。

 

気がついたら異世界にいた、というところから始まって、異世界で生活していくにあたって前の世界の記憶が殆ど無いためにゼロからスタートするのだけど、ハルヒロたちの元居た世界が我々視聴者と同じ時代のおそらく同じ日本で、我々と同じ思考・感覚を持った若い子たちである、ということだけはわかっていて、そういう子たちが異世界にあっても我々と同じ思考・感覚で考え、語り、行動する。そこがしっかりしているから、「現代人が異世界に本当に迷いこんだら生きていくのは大変なんだ」という本作の芯をしっかり捉えている。

生きていくためにはモンスターを倒さなければならないのだけど、ちょっと出歩いたら遭遇できる、RPGでいうところの最弱モンスターにあたるゴブリン1匹にパーティー全員で襲いかかってもなかなか倒せない、四苦八苦してようやく倒したという時に、殺生が重くのしかかる。そういうことを繰り返して、倒したゴブリンの装飾品を物色するのにも慣れた頃に、リーダー・マナトが致命傷を負う。友の死の始終に寄り添ったメンバーの、死ぬなんてありえない、何かの間違いだとでもいうような取り乱し方も実にリアリスティック。友の死という状況にあっても、むしろそういう時だからこそ、他人の温もりを感じたくなる。生と性が密接に関わっているということからも逃げずに、現代人が、殺生をしなければ生きていけない世界で生への執着から眠っていた本能を呼び起こす物語をしっかり描き切った。「生」の実感を再認識させる物語だった。

また、マナトの言葉やメリイのエピソードから、「元居た世界」でそれぞれが抱えたであろう問題が、「この世界」でもしっかり生きていて、それらが救済されている様子も伺える。勇気を出して懸命に生きることへの応援も込められていた。

動きのあるOP映像ではないけども、若さが放つ「生と性」の輝きが眩しい画がお気に入り。若いっていいねえ(羨