アニメられる日々

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2017年春アニメ私感

 

有頂天家族

 きちんとルールがあって、望むと望まざるとそれを踏まえないといけない狸と天狗と人間のそれぞれの在り方生き方を、さも自由で奔放であるかのように描くのが本作の魅力で、それは考え方捉え方ひとつでも世界は変わって見えるよ、楽しく生きようというエールだと受け取れました。そういった秩序と混乱・不自由と自由・愛と憎のアンビバレンツに、久米田先生のデザインしたポップかつシャープなキャラがとても良く馴染みました。

 

 

 正解するカド  

骨太なSFではあるけども恋愛要素もありで、非常にとっつきやすい仕上がりに。フィクション的に理想化された政府や政治家の物分りの良さが、展開に加速度をつけることによって得られたゆとりがあったから出来たことなのですが、そうであるがゆえに批判の的になってしまったのは悲しいです。ワンクールという短い枠で、これほど壮大な内容をライトに仕上げてみせた手際は素晴らしいと思います。

 

 

リトルウィッチアカデミア 

 落ちこぼれな少女が皆に追いつこうとあれこれ試行錯誤する様子が可笑しくて、そういった可笑しさに悲壮感を覚えさせないさじ加減も良かったですし、それでも諦めず夢に向かって邁進する、純粋でひたむきな姿勢に、次第に誰も笑わなくなるどころか感動すら覚えるよう描いていて胸が熱くなりました。本作はTRIGGERとアニメーションのあり方や願いを描いているとの噂がありましたが、アッコの姿勢は初心者にこうあってほしいという道筋を示したのかもしれませんね。噂の域を出ていないのですが、それを裏付けてるような一貫性があり、夢を諦めないという姿勢と、夢のある世界への願いがストレートに伝わってきました。滑稽さから情緒からダイナミックな光景まで、魔法の世界のファンタスティックな光景をアニメーションで賑やかに表現する技術にも圧倒されました。

 

 

ID-0 

宇宙進出はもとより、クローンや義体への精神の転送をも可能にした遠未来を描いたSFですが、設定や経緯が簡潔でテンポよく展開していきました。義体に転送してるときに混乱に巻き込まれて肉体をロストした少女の不安を描いた上で、あらゆる事情で肉体を失った人々の在り方をポジティブに描くことで、人の意志の強さをドラマチックに表現したのが凄く気に入りました。そういった人の意志の強さを歌詞に乗せたOP曲「ID-0」も凄く好きで勇気づけられました。贅沢を言えば、2クールは欲しかったですね。もっともっとあの人のことやこの人のこと、その経緯などを語って欲しかったです。

 

 

冴えない彼女の育てかた♭ 

創作と恋愛の線引きというものを棚に上げて、とにかくサークル活動に夢中になった1期でしたが、2期は活動を続けていくうちに抑えきれなくなった想いとか、残された時間の無さや物事の転機が、関係の変化を否が応でも求めていく展開にハラハラさせられました。チャンスをものにするために大事なものを捨てなければならない、そういったストイシズムに一定の理解を示した上で、それでもあれもこれもやっちゃいなよ!と締めくくるのに刺激を受けました。若いって良いですね。

 

 

ベルセルク 2期 

 ガッツとキャスカの旅にファルネーゼセルピコが加わって、地獄のような凄惨な世界のなかで平穏と安寧を求める様子が切実に思えましたし、正しいと信じていたものが間違ったと気付いた時にそれでも信仰に固執するか、それとも間違いを認めて改めていくかのその明暗もよく描けていて、センセーショナルなバイオレンス「だけ」を売りにするのでなく(そこも売りであることに異論はありません)、そういった救いのない世界でもがく清らかな精神・意志を尊重する作品であるのがすごく気に入りました。ガッツの圧倒的な立ち回りによって彼の底知れぬ怒りを演出する、そしてシールケの時折見せる年相応のか細さもしっとりと表現する、そういった映像と音の表現力が豊かでそして凄く力強い作品でした。

 

 

月がきれい 

 普通の男の子と普通の女の子が、他愛もないことで知り合って急速に思いをつのらせていく一目惚れ感に、ほんの少し背中を押すことで関係を進展させていく展開にドキドキ。ほんのちょっとの勇気で通った想いはしかしとても心許なく、すぐにも壊れてしまいそう。「初恋は実らない」「初恋は長続きしない」「進級進学が破局のきっかけに」「遠距離恋愛は上手く行かない」そういった恋愛のセオリーやジンクスは当然視聴者も重々承知なわけで、そういった不安が何度も何度も脳裏をよぎり、恋敵の出現や不和などが生じては頑張れ、乗りこえろ、と手に汗を握りました。それは僕がロクな恋愛をしてこなかったからこそ、せめて物語の中では清らかな恋愛が見たいという思いがあってのものなのかもしれませんが、それはともかく(涙を拭いつつ)、そういった不安を全て払拭してみせたのが嬉しかったです。ほんの少し、自分の内にこもる怨念が浄化された気がします。

 

 

アリスと蔵六

人々や社会の安全を脅かす能力をもった紗名を分別のついていない子どもに見立てて、カミナリ親父がその子を保護していくことから始まる物語。1章にあたる導入部はそういった子と保護者の関係への興味にバトルアクションが乗っかっているのが正直邪魔に思えたのですが、紗名の逃走劇が落ち着き安住の地を得て2章が始まると、 子と保護者の関係にぐぐっとフォーカスしていって、見どころが定まったのが良かったですね。また、2章の物語を進めていく上で、1章はやはり欠かすことの出来ないエピソードだったんだと思える展開に仕上げるのも上手いと思いました。紗名の教育がカミナリ親父・蔵六ひとりによるものでなく、皆が関わり合ってなされるのも凄く良かったし、紗名自身が誰かの成長を促す存在にもなり得たのもまた良かったです。

 

 

エロマンガ先生

  「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の伏見つかささんの原作小説らしい、俺妹の改修型といいますか、似た要素をふんだんに盛り込んだ作品。俺妹よりもH度は上がってるんですが、血のつながりはないからどんどん行くよ!という思い切りの良さや、ここまではいけるでしょ!という絶妙なコントロールがことごとく決まり、また倫理に背くような後ろめたさもないので、とても明るく楽しい雰囲気に仕上がりました。はずかしくてこそばゆくなることも多々ありましたが、視聴後感がとても心地良い作品でした。

 

 

GRANBLUE FANTASY The Animation 

 RPG原作のファンタジーをわかりやすく描くことで、冒険のまだほんの入り口ではあっても十分満足感が得られる密度のあるドラマに仕上がりました。 そういった「冒険が始まる物語」に、「靄に包まれた世界とそこを駆けていく人物たち」というOP映像を持ってくるセンスが凄いですし、そういった雰囲気を持った曲を作るセンスも素晴らしいですね。

 

 

進撃の巨人season2 

原作が面白いのでそのへんは安心していられますね。前期では途中で作画に疲労が感じられましたが、今期はペース杯分が上手く行ったようで終始安定して目にも楽しかったです。アニメ放送のペースを考慮した構成も良かったです。

 

 

クロックワーク・プラネット

 キャラデザが僕好みなのもあってかなり贔屓目ですが、ひとつの物語がふたつ以上の物語で紡がれていて、美少女モノのラブコメが苦手な方でもバディアクションが好きなら楽しめるんじゃないでしょうか。どっちも大好物な僕が夢中になるわけです。こういう素晴らしい作品には予算も時間もいっぱい注がないとダメですよ!

 

 

ゼロから始める魔法の書 

 それぞれのキャラの性格と立場の違いから来る思考と言動の描き分けが凄く良くって、剣と魔法の冒険ファンタジーの王道をゆく物語であっても、そういった言動や振る舞いはお約束に任せずきちんと個性に合わせて練られているので、どっしりと地に足の着いた丁寧な物語に仕上がっていました。台詞の掛け合いのテンポも心地よかったですね。

 

 

ロクでなし魔術講師と禁忌教典

 ラノベってこうなんでしょというテンプレ批判は十分承知の上で、あえてそれに乗っていく勇気は評価したいですね。実際そうした批判をすんでのところでかわしたり、良いから良いんだ!どんどん模倣れ!と言わんばかりにあえて正面から突破していく若々しい元気いっぱいな作品。教師と特定の生徒だけでなく、すべての生徒たちの存在感を演出してより学園モノらしい雰囲気を作ったのも良かったですね。

 

 

カブキブ! 

 歌舞伎のような敷居の高い伝統芸に、一般のそれも子どもたちがどう関わっていくのかという問題に、こういう方法があったんだな、と説得力ある設定を構築できたのが見事でしたね。伝統芸能を取り扱う気配りも好感で、男女の人数や割合のバランスが良く、また皆いい子たちで、衝突さえも清々しく映りました。

 

 

アトム・ザ・ビギニング  

 鉄腕アトムの前日譚ということですが、肝心の鉄腕アトムを実はちゃんと見たことがないのでどういう話なのかわからず、ともかく将来なんだかんだ対立するだろうと思われるお茶の水博士と天馬博士の若い頃の様子だと思うと勝手ながら感慨深く思いました。お茶の水くんは典型的ないい子キャラで、正直面白みにかけるのですが、不遜でも憎めないところのある午太郎くんや、敵か味方か茂斗子さんや、無口でも正義感や思いやりがあって可愛らしい蘭のアシストなどで、賑やかで楽しい作品に仕上がりました。基本はキッズ向けのような明快で親しみやすい内容ですが、手塚治虫作品の息吹を感じさせる深みも時折見せて、見応えもありました。

 

 

終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?

 クトリの悲しみのみに集中するには、あまりにも厳しい世界観でした。皆がいつ命を失うかわからない世界より、生きてることが当たり前な平和な世界のほうが、彼女の不幸がより伝わりやすかったと思います。本人たちには迷惑な話かもしれませんけど。

 

 

総感

 2017年の春アニメ(3~6月期)は有頂天家族2」「進撃の巨人season2」「冴えない彼女の育てかた♭ リトルウィッチアカデミア 」「ベルセルクなど継続枠・2期作が好調で、ある種シリーズ作品と言えなくもないエロマンガ先生も含めて認知度の高い作品が確実に支持を得ていった堅実な印象を受けたシーズンとなりました。個人的には正解するカド」「ID-0」「月がきれい推したいところ。また話題性には欠けましたがクロックワーク・プラネット」「ゼロから始める魔法の書」「カブキブ!などストーリーやアイディアの光った作品もあり、個人的には充実したシーズンでもありました。