アニメられる日々

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2018年TVアニメ10選(作品単位)

 

宇宙よりも遠い場所

少女たちが南極へ行こう!と途方もない目標に向かって走り出す事がきっかけになってる作品ですから、たとえ行けなくてもそれはそれでドラマになったと思うんですよね。それが南極で消息を絶った母を探したり、幼馴染と決別したり、不登校の原因となったいじめっ子たちに文句を言ってやったり、アイドルという立場抜きの等身大の友情を得たり、南極観測隊の歴史をなぞってみたり、各々のけじめをつけたりしながら、南極へ行って帰ってくるまでをワンクールでやってしまうという驚異的な作話術で鮮やかにまとめ上げてみせました。少女たちらしいキュートなユーモアでドタバタと駆けながら、テンプレでないその世界を生きる人たちの魂のこもった言葉の一つ一つで感動のドラマを次々と演出し、最後の最後にどでかいサプライズまで用意してくれました。アニメ史にも残る傑作と言っていいでしょう。

 

少女☆歌劇レヴュースタァライト

舞台芸術や芸能を学ぶ学校でトップスタァを目指し切磋琢磨する少女たちの様子を、キリンのオーディションなる奇想天外な空間での戦いを通して象徴的に描いた作品。スタァになるために今ここにいる少女たちが、自身の動機を再確認しながらモチベーションを高め合っていく様子に、こちらも胸が熱くなりました。スタァとは何か、舞台劇とは何か、それらを突き詰めていく姿勢は、実際に公演されている舞台劇を原作とした作品らしくて、またとても上手く物語と掛けていましたね。

 

メガロボクス

あしたのジョー50周年記念作品ながらギヤという強化外骨格を使用した拳闘をショーとする近未来SF風ビジュアルで、一見あしたのジョーとは程遠い斬新さがあるのですが、物語を見進めていくうちに、なるほどあしたのジョーだな、と思わずニヤリとしてしまいます。ただ、本作の魅力はあしたのジョーにいかに掛けているか、ということ以外に、先行きの見えないスリリングなストーリー構成にあります。スラム街でくすぶっていたメガロボクサー・ジャンクドッグが偽りのID「ジョー」を名乗りのし上がろうという道のりは、何時その偽りの身分がバレ、またヤクザに弱みを握られているトレーナーの南部贋作がいつ危険に巻き込まれるか、チーム番外地はつねに綱渡りを強いられます。主役なんだから負けることはないだろう、と一片も思わせることのない手際が見事でした。

 

ゾンビランドサガ

夢に向かってウキウキな少女がいきなり不幸に巻き込まれて、ゾンビになってしまったということが飲み込めないままコミカルにストーリーが展開していくのと、その際の巽の関西芸人のウザい一面をぎゅっと凝縮したようなノリも相まって、第一印象はすこぶる悪かったです。これは一体どうオトシマエをつけてくれるのか、と見届けるつもりで見進めていたのですが、2話の深夜のアーケードでのヒップホップなミュージカルでかなり前のめりになってしまい、ドライブイン鳥とガタリンピックの時点でもうそのへんは目をつぶってもいいか、くらいには気に入ってました。そのうえで、8話のリリィとお父さんとのエピソードで、不幸にも人生を終えてしまった人たちと残された人たちへの哀悼と敬意が込められてるとわかったのですから、これにはもう脱帽ですね。ありがたいです。

 

ひそねとまそたん

学習まんがのようなのどかなデザインのキャラと航空自衛隊の間に可愛らしい龍がいる、その光景は戦争放棄を謳いながら自衛戦力をもつ我が国らしくて、その匙加減の絶妙さがいいですよね。そして来るべき有事に備えてのほほんと職務をこなしていたら、国家の安寧のための贄となることをさらりと強いられるのですから、この辺もある意味我が国らしくて風刺がきいてていいですし、これだけのどかに奉公の意味をぼかしながら、すっと鞘から抜いて刃先をちらつかせるセンスに戦慄しました。

 

ゴールデンカムイ

日露戦争後の北海道を舞台に、アイヌの秘蔵の金塊を巡って各勢力がその在処を示した「刺青人皮」の争奪戦を繰り広げるなかで、先の大戦を生き延びた「不死身の杉元」と騒動の鍵を握るアイヌの少女・アシリパとがそれぞれの目的を果たすべく結託し、行動を共にします。本作の魅力はその争奪戦の駆け引きの妙味と、戦後の騒乱とその中を生きる人々の狂気・残忍性・変態性を、肯定も否定もせず描く一方で、アイヌの少女・アシリパに対する杉元を始めとする大人たちの敬意と尊重と友愛の姿勢をも描くところにあります。人は狂人にも聖人にもなれて、またその両方をひとつの人格に有することも出来ます。だからこそ人の心は複雑で捉え難いし、人と人が関わればドラマが生まれます。そういったことを俯瞰で描ける視点は才能ですよね。濃密なドラマの数々に深い溜息をつくことが多々有りました。

 

ヒナまつり

ヤクザが宇宙人の少女を養う羽目になるコメディですが、とはいえヤクザが主役で笑えるのだろうか、と不安に思ってると、水商売・貧困・児童労働・ホームレス・孤児など際どいところを突いてきてハラハラすること多々あり。宇宙人の少女という無茶さがその危うさをうやむやにしてしまうのがまた可笑しいのですが、いつ何時足を踏み外すか、本作はなかなか安心させてくれなくて、結局最後までハラハラさせられました。それでも美麗な仕上がりの画作りとユーモラスな演出、そして混じりっ気のない無垢さが紡ぐ暖かい人情のドラマも間に挟んでくれたことで、とても良い印象で見終えることが出来ました。あいたー!は今でもたまに聞きたくなります。

 

はねバド!

バドミントンの部活ものですが、トップアスリートたちを中心に据えながら、バドミントンに関わるすべての人が主人公であるような、モブにさえ人生を感じさせるリアリティの積み重ねが見事でした。そんな中で、主人公の綾乃と母親についてだけが漫画的に飛躍していて、そこと周囲との温度差は終始気になってしまいました。それでも、未熟なプレイヤーならではの、トップアスリートならではの、指導者ならではの、挫折した人ならではの…バドミントンに関わるすべての人たちの心境や思考に迫り、何が良いか悪いか一方的に断じること無く多様に描いてみせたのが素晴らしかったです。

 

ハクメイとミコチ

こびとのハクメイとミコチの生活を描いた物語。ドールハウスやミニチュアジオラマを鑑賞してるようなワクワク感が魅力ですが、現実世界にはないはずのこびとのいる世界の中で、どこかで見たような住まいや小物、着るものに食べるもの、生活スタイルを目撃するたびに、その世界がまるで我々と地続きの世界であるかのようなときめきを覚えました。ふっくらと丸みを帯びたタッチ、やさしい色使いがぽってりとあったかい感触を伝えてくれました。画面分割を多用することで、鑑賞の姿勢を補強する気配りも嬉しいですね。

 

刻刻

時が止まった世界に出入りできる石を持った一族が、その石を奪おうという何者かに時が止まった世界で追われる、それは何者か?その目的は?というミステリーですが、シンプルでありながらとてもミステリアスでスリリングで大いに楽しめました。じいさんと無職の父とニートの兄と、ヒロインの一見ただれた家庭環境に不安を覚えましたが、その頼りない家族が止まった世界で見せる活躍、頼もしさが意外でしたし、また魅力的でしたね。人の善し悪しと職の有る無しは必ずしも関係のないという当たり前の事に気づかされました。またヒロインの勇気と、それでも挫けそうになるところも心を揺さぶられました。

 

 

総感

今年は私事でなにかと慌ただしく、シーズンごとの記事すら放っぽってしまいました。来年もおそらくそうなってしまいそうですが、年の締めくくりだけは続けていければと想います。

今年は「宇宙よりも遠い場所」が抜きん出てましたね。良作も多くて充実した年になりました。コメディで元気な作品が多かったように思います。一方で、がたがたと崩れてしまう作品も多々あり、今後への不安も感じました。来年は良い年になるといいですね。見る側にとっても作る側にとっても…。