アニメられる日々

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2019年TVアニメ10選(作品単位)

さらざんまい

浅草を舞台に、3人の少年がカッパとカワウソの抗争に巻き込まれながら、それぞれの誰にも言えない胸の内に踏み込んでいくという物語。面白おかしいパッケージと意味ありげな仕掛けの数々、ひと癖もふた癖もあるバンクなど、「少女革命ウテナ」や「輪るピングドラム」「ユリ熊嵐」の幾原邦彦さんの新作らしい一面を持ちながら、それまでの氏の作品にはないわかりやすさ、真っ直ぐさが本作の特徴です。そういったところが好みの分かれるところとなったようですが、僕は氏のストレートな作品が見たいと思っていたところだったので、僕にとってはどストライクな作品となりました。そのままでは重苦しいそれぞれの不足や喪失の物語を面白おかしく照らす手際が、しかしながら嫌味がなく愛にあふれていて、そういうところがたまらなく好きでした。

 

ヴィンランド・サガ

 戦いに明け暮れることが神に肯定されている人々が中心の社会の中で、べらぼうに強い戦士トールズが戦いに嫌気が差して落ちのびるという導入、そんな父を目の前で殺された息子トルフィンが父を殺したアシェラッドに復讐するために同道するという展開、戦士の在り方生き方の見本としてのトルケル、われわれと同じ目線を持つ存在としてのクヌートと、舞台設定もキャラ設定も実にバランスが良く、またそれらを生かした厚みのあるドラマは見ごたえがありました。戦士の神話とキリスト教的価値観を衝突させて、独自の価値観を提示するあたりも意欲的でいいですね。ドキュメンタリーとは違う物語の魅力が本作にはありました。

 

まちカドまぞく

ある日ツノとしっぽが生えてきた少女…実は彼女はまぞくだったのです!から始まるコメディ。かわいらしい女の子たちがドタバタするコメディは数多くありますが、本作はまずキャラがいい子すぎないというのがいいですね。ちょっぴり意地が悪かったり面倒くさがりだったりわがままだったり…いい子すぎるとボケもツッコミも弱くなるんですよね。そのへんの塩梅が絶妙でした。そしてもう一つは、みんなちょっぴり不幸だということです。貧しかったり一人ぼっちだったり身動きが取れなかったり…。みんなちょっぴり不幸なのにみんな前を向いていて、健気で愛おしく思えました。僕はご先祖様の置物形態がたまらなく愛おしくて、思い出すだけで愛おしさで涙腺が緩みます。 

 

荒ぶる季節の乙女どもよ。

 文芸部室で恋の妄想に浸っていた無垢な女生徒たちが、望むと望まざると迫ってくる本物の恋と性との遭遇…大人の階段を、蹴つまずき転びそうになりながらも叫びながら駆け上がっていくような様子がなんとも可笑しかったです。ときにシリアスに、ときに見るものの古傷をえぐってくる生々しい恋物語の側面もあるのですが、コメディとして面白おかしくなるように展開をコントロールし、コメディ作品として芯の太い作品に仕上げました。

 

ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 魔眼蒐集列車 Grace note

Fate/zero聖杯戦争に参加したウェイバー・ベルベットことロード・エルメロイⅡ世が聖杯戦争にまつわる事件を解決していく物語。Fateシリーズのファンにとってはシリーズゆかりのキャラが出るだけでも嬉しいのですが、英国の貴族階級目線での優雅な雰囲気作りに魅了されましたし、クールに振る舞うロードがしばしば見せるウェイバー君的弱さや青さが胸を打ちました。年齢と経験を重ねて落ち着きと風格を持ち始め、周囲の信頼も厚い男の、英雄王の背中を追うあの頃と変わらない目線とのギャップが、歳を重ねてもあの頃のままのつもりでいるわれわれの共感を呼ぶわけですね。

 

盾の勇者の成り上がり

 なろう小説のアニメ化作品で、いわゆる俺TUEEEEキャラが4人も出てくる出だしに面食らいましたし、汚名を着せられるくだりのシリアスな描き方が色仕掛けに引っかかって…という事情なのでどうにも締まらないというあたりや、意趣返しとはいえやりすぎるところがあるなど痛痒いところも少なくないのですが、失うものがなくなった盾の勇者がとりあえず生きていくために地道に行動した結果、仲間と勇者としての信頼を少しずつ得ていく様子が小気味良かったです。また、そうして汚名をそそぎ、ひととおりスカッとしたところで、落ちぶれ勇者の逆転劇から世界を救う勇者の本格ファンタジーへと路線をシフトする切り替えのタイミングが抜群に良かったです。

 

荒野のコトブキ飛行隊

 「ガールズ&パンツァー」「SHIROBAKO」の水島努監督作。架空の大陸ユーハングを舞台にした旧日本軍の航空機による空戦アクション劇は、空戦をたっぷり描くためかCGによる作画で、それによって人物の演技演出におぼつかないところがあったのは惜しいところ。ただ、空戦はもとより、本作はカメラワークが抜群に良くって、水島映画と言っても良い風格すらありました。喜劇映画的なユーモラスなやり取りと目配せや眉の動き一つ単位の細かな芝居が生む可笑しみなど、水島努監督作品ならではの魅力に満ち満ちていて、たまらなく好きです。

 

ケムリクサ

荒廃した世界で、ヒトのようでヒトでない何者かたちの行動を追うことから始まった物語は、ヒトと思しき謎の人物わかば目線で進んでいきます。わかば目線で何が起こっているんだろうと考えながら、物語を追っていくのが楽しかったです。また、けものフレンズを作ったたつき監督の描く荒廃した世界の示唆するものに、背筋の伸びる思いもしました。

 

約束のネバーランド

 孤児院と思われた施設が実は…というミステリー。真実を知った主人公たちは、施設からの脱出を計画しますが…。まあ声が大きいこと!そんな大声で!脱出の計画の相談なんかしたら!聞かれるで!連れてかれるでーッ!!と毎回ハラハラさせられました。90年代的な特徴的なキャラデザがぬるぬる動く、アニメーションとしても贅沢な作品でした。

 

女子高生の無駄遣い

タイトル通り、女子高生が女子高生らしからぬ他愛もないことであーだこーだするコメディ。 小学生並みの「バカ」こと田中を中心に、個性的な生徒たちが各話の主役となって繰り広げる他愛もない行動が可笑しかったですし、不意にちょっといい話なども盛り込んで充実の内容でした。バカとロリとの掛け合いやヤマイへのワセダの指導などがツボでした。あと戸松遥さんのヲタJK感あふれる演技が良かったです。

 

 

総感

今年はTVアニメにとって厳しい年になるのでは…と不安に思っていましたが、予想を上回る厳しい年となりました。劇場アニメの活況によっては今後も苦しい状況が続くのではないかと予想されます。それが業界にとって良いことなら致し方ありませんが、TVシリーズを追うのが楽しみな身としては寂しいものがあります。アニメ業界にとってもアニメファンにとっても、来年はいい年になるといいですね。